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20年前の古きヘッドホン「SONY MDR-IF240RK」と考えるレイテンシー問題
・はじめに
机に2つキーボードが載っている。ひとつはもちろんPCのキーボード。もうひとつはシンセサイザーのキーボード。
何年DTMをやっていてもろくに弾けないシンセの鍵盤であるが、PC作業をしている時についつい手癖の、曲とはいえないフレーズを適当に弾く。
さて、ここで問題が出る。大丈夫な人もいるかもしれないけど、個人的には少し困っているコトなのだ。
・レイテンシー
レイテンシーとは遅延時間である。これから始まるレイテンシーの話はシンセサイザーの鍵盤を押してからワイヤレスヘッドホンから音が出るまでの遅延時間と思って頂きたい。
ヘタクソな音は外に出したくないので現在、主に使っているヘッドホン……イヤホンは以前記事を書いたSOUNDPEATSのRunFreeである。
空気伝導式のRunFreeは軽量かつ装着感、特に耳の違和感が少なく、耳の横にスピーカーがあるような感じで、音質もこの空気伝導式や骨伝導式の中では結構良く、低音も高音もそれなりに出てコスパの高い良いイヤホンなのだけれど…
※ RunFreeファームウェアのアップデートでかなり状態が悪くなるという話も出ているようだ。自分はアップデートしていないので状況は確認出来ていないが、本当ならとても残念な話である。Amazonの販売サイトでは弱点だったサイドパネルの脱落防止の対策をしたとあるのでマイナーチェンジもされているようだが……
ワイヤレス、Bluetoothにはどうしても遅延が発生する。RunFreeにはゲームモードもあって、シンセを弾くと通常モードでは無理。ゲームモードでは弾くのがちょっと困難な程度には解消されるのだが、困難……
・レイテンシー対策に優れたワイヤレスヘッドホン
現状のBluetoothのコーデックは処理が複雑なため通常のヘッドホン・イヤホン類では200ms(0.2秒)、遅延が少ないもので50~80ms(0.05~0.08秒)、遅延対策に特化しているといわれるコーデックのaptX LLでも40ms(0.04秒)の遅延が発生するという。
※ コーデックの差だけがモビルス……レイテンシーの速さを決めるものでもない。RunfreeはコーデックがSBCと古い規格だが、昔のaptX並みだしゲームモードではそれよりも遅延しない。内部回路の進化で発売時期が遅い機種はより良くなるのだろう。
ではそんなレイテンシー性能に特化した楽器用ヘッドホンがないかというと、それはある。もちろん有線のヘッドホン・イヤホンを使えば問題ないのは当然ではあるのだが、製品が出ているならば自分同様にレイテンシー対策に優れたワイヤレスの製品の要望をする人がいたというコトである。
・YAMAHA YH-WL500
世界の楽器メーカーでトップシェアであるYAMAHAが、子会社であるアメリカのエフェクター・スピーカーなどで定評のあるLINE6社とコラボして作ったのが2023年5月に発売された楽器演奏用 超低遅延ヘッドホン YH-WL500である。
オリジナルのワイヤレス通信方式によりその遅延時間は4ms(0.004秒)だという。流石は楽器メーカーであり、一世を風靡したシンセサイザーDX7から発展したDSP技術でネットワークルーターの世界でも強いヤマハである。
希望小売価格 49,500 円(税込)
ちょっと高いけど、性能を考えるとコスパは良い製品ではないだろうか。bluetoothも搭載しており、そちらから音楽を聴いて演奏するのも可能との話もある。
・audio technica ATH-EP1000IR
国産ヘッドホンの雄、オーテクことオーディオテクニカ(AUTECブランドですしロボットなどの食品加工機器も作っている)が楽器向けワイヤレスヘッドホンシステムとして2021年4月に発売したのがATH-EP1000IRである。
ATH-EP1000IRは電波ではなく赤外線通信でレイテンシーの問題を解決した。ガラケー時代からスマートフォン初期には端末同士でのデータ通信としてよく搭載された赤外線通信(IrDA)であるが、WiFiやFeliCa(おサイフ携帯のシステム)、そしてBlutoothに駆逐されて消えていった……が?
※ 実は現在販売しているXiaomi製のスマホに赤外線通信(IrDA)搭載機種がありMi Remote controller - for TVというアプリでTVリモコン用として使われていたりするようだ。ガラケーや初期の国産スマホの赤外線通信(IrDA)は家電リモコンとしても使えたのだ……って、2021年11月から現在も発売してる京セラのかんたんケータイライト KYF43にぱ赤外線通信(IrDA)が残ってるだと?
ATH-EP1000IRのオリジナルのハイブリット赤外線システムでの遅延時間は1ms(0.001秒)以下。圧巻の低遅延である。
オーディオテクニカ Webページ価格¥27,280 (税込)
赤外線という古い方式だが、その分回路での遅延を少なくするという発想でこれも高いコスパの製品である。
あれ、赤外線方式?そういえば……
・SONY MDR-IF240RK
押し入れに入れてある古い電気部品を詰めたダンボールをひっくり返したら出てきたのがこのソニー製コードレスヘッドホンMDR-IF240RKである。
2002年11月発売、30mmドライバーの赤外線式コードレスヘッドホン。発売してそんなに経ってない時に購入したのでもう20年は経った品物だが、そういえば昔、コレ付けてシンセ弾いてたよ俺。弾けないけど。
当時はシンセサイザー2台(YAMAHA DX21とCASIO HT-3000)をBOSSのHEADPHONE AMP HA-5 Play Busっていう入力が3つある小型ヘッドホンアンプに繋げてをミキサーとエフェクター(オーバードライブとディレイorコーラス)として使っていた。
しかしPlay BusもMDR-IF240RKも両方がノイジーだったのでJVCの有線ヘッドホンをメインにして、MDR-IF240RKは一度ニッケル水素電池がダメになって交換してからは使わずに仕舞ってあったのだった。
ダンボールの中にはヘッドホン本体のMDR-IF240R、送信部であるTMR-IF240R、AC電源アダプター(DC9V出力)が入っており、この商品群を合わせてMDR-IF240RKとなる(KはキットのKなのかな)。
アダプターの配線が他の多々配線と絡んで、それを解くには苦労したが、一応は問題なさそうだった。
20年経って紙のラベルには変色もあったが、紫外線によるプラスチックの劣化も見られなかった。特にスポンジライクなイヤーパッドの劣化がほとんどないのには驚いた。SONY凄い。いや保管が良かった?(良くない)
実際にPCに接続して(シンセはPCに有線接続してある)使ってみると、やはり遅延は感じられない。ノイズについては現代では酷くて叩かれそうなレベルだし(ボリューム調整を低く、PCは音量全開で音が出ていれば、なんとかノイズ気にならないくらい)、音質も当時でも普及価格帯製品だし、今のヘッドホンから比べると良いとは言えないが、レイテンシーを気にせずに使えるのはありがたい(遅延時間の数値は不明だが弾ける程度の遅延だ)。
感心したのは20年前の製品ながら電源管理がしっかりされているコト。送信部のTMR-IF240Rにヘッド本体を乗せると自動的にパワーオフして充電が開始されるし、5分間音声入力がないとこれも自動パワーオフされ(ボッツと大きい切断音が出るのはご愛敬)、音声入力があると自動再起動される。車のアイドリングストップのように制御されているのだ。電源ボタンはあるが基本触る必要がない。
あと、ヘッドホン本体はスプリングが内蔵されていて、長さ調整を装着するときに簡単に出来る、できるのだがスプリングがたまにズレて音が出るのはやや減点対象かな?
発売時希望小売価格7,260円(税込)
![](https://assets.st-note.com/img/1712653626299-CnL127dRBJ.jpg?width=1200)
中央部にチャージランプと赤外線発行部4つが並んでいる
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![](https://assets.st-note.com/img/1712653729362-luya31A3Wr.jpg?width=1200)
RCAピンジャックL・R、電源入力
![](https://assets.st-note.com/img/1712653775226-lN2f2jxZgi.jpg?width=1200)
電源SW、電源LED、VOLダイヤル
![](https://assets.st-note.com/img/1712653806397-ki7CHq5VSs.jpg?width=1200)
単4型ニッケル水素電池装着状態
![](https://assets.st-note.com/img/1712654109957-nAHMPixPKz.jpg?width=1200)
・他の赤外線式ヘッドホン
現在発売されている赤外線式ヘッドホンはAmazonで確認するとATH-EP1000IRを除いて2種類あった。ホームセンターなどの電気コーナーでおなじみのELPA 朝日電機とDocoolerというメーカーの商品。
DocoolerのほうはAmazonのレビューにソニーの赤外線送信機が使えたという記述があるので、少し試してみたい気もしないでない。両製品も試してないから赤外線だからと言って絶対レイテンシーが大丈夫かは不明。
ソニーでは同時期にMDR-IF245RKという機種も出していたが、コレも当然、中古以外での入手は難しいだろう……と思ったら新品で17,000円から23,000円くらいの価格帯で今も売られている。元値はオープン価格。今や知られざる名機になっているのか??40mmドライバーでMDR-IF240RKより音は良さそうだ。
・おわりに
そんなこんなで、しばらくは基本はSOUNDPEATS RunFree、シンセで遊ぶときはMDR-IF240RK、DTMやるときは有線のOneOdio Monitor 60という使い方になりそう。でも無線はYAMAHA YH-WL500、有線はSONYのMDR-CD900STが欲しい(笑)
赤外線式はレイテンシーだけ見ればBluetoothよりも良いけど、廃れた技術であるし、Bluetoothに対して音質、特にノイズについてはかなり落ちると思われる。当然、今の時代のノイズキャンセリングや外音取り込みなんかは出来ない。
※ audio technica ATH-EP1000IRが音質とノイズの点でどの程度進化しているのかは興味があるが。
でも個人的にはノイズも今やカセットテープ復権のようなノスタルジックな味わいがあるし、押し入れのダンボールから出てきたMDR-IF240RKに愛着を感じないコトもない。今まであまり使わずに悪かった……
※ でもたいていこういう場合は使いだすと壊れるのも世の常な気がする。すでにチャージランプが消えてチャージされているかが不明。ただし単4電池での駆動が可能で別のニッケル水素電池でも動く(専用電池以外は補償の限りではないがそもそも20年選手では補償もなにもない)ので、ニッケル水素電池も充電器も予備がある身としては問題ない……と思いたい(笑)