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『夏目友人帳』㉑名無しの割れ鏡の自己承認欲求は「予告殺人」


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名無しの割れ鏡の自己承認欲求は「予告殺人」


「割れ鏡」貴志に「封じ鏡」で退治される

夏目友人帳のシーズン2の6話と7話は続き物、姿を見ただけで人間をけしからんと「食ってやる」と360日という期限を切って脅す妖怪の物語だ。

その妖怪の名を誰も知らないということが問題だった。名前がなければ貴志は対抗できないのだ。そういうわけで、貴志はニャンコ先生が池に落ちた隙にその妖怪に拉致されてしまう。

拉致された洞窟で貴志は顔面をなめられ「妖怪」を視る視力を失う。今までで最大の危機だといえ、ニャンコ先生は「斑」になって貴志を護衛する。


そもそも、この名無しの妖怪は、同じ学校の女子が姿を見たことから「食ってやる」と脅し始めた。人間が恐怖と苦痛を味わうのを見るのが生きがいの妖怪なのだ。

おねえキャラの大物妖怪「ちょび髭」のおねぇ言葉もリズミカルで面白かったが、多軌透(たきとおる)というその女子が「魔法陣」を描いて妖怪ウォッチングをしたことが事件の始まりだった。最終的にはニャンコ先生が妖怪仲間から「封じ鏡」を手に入れてきたことから、多軌を脅した妖怪が「割れ鏡」だと判明する。

今回はモノが「もののけ」となって人間を苦しめるわけだが、モノが人格を持つのが日本の妖怪。八百万の神々には「かまどの神様」「トイレの神様」とモノの神様は大勢いらっしゃる。その中でも「鏡」というのは特別な意味があると思う。三種の神器にもあることだし、力が強いことは言うまでもない。

割れ鏡の標的となった印としての文字

ともかく人間嫌いというところから、その鏡を使った歴代の持ち主が「人間の醜さ」をずいぶんと見せつけたことだと思う。
量子力学では物質も素粒子でできている以上、緩やかに運動していて変化し続けている。長い年月の間に、その鏡の素粒子のすき間に、人間の醜い心のフォトンが浸透してすき間を埋め尽くし、ネガティブなエネルギーとしてのフォトンが高波動で高密度な「妖怪」が誕生したのだろう。

この「割れ鏡」退治では、ニャンコ先生はじめ、妖怪たちの知らない「魔法陣」は、多軌の祖父が「陰陽師」のような仕事の関係で、残した遺品の紙切れにあった。



事件の発端の「魔法陣」を描く妖怪ウォッチャー

多軌は、その魔法陣を妖怪が通過するときに人間に見えるようになるのが面白くて、子供のころから地面に書いて「妖怪」ウォッチをしていた。
この「魔法陣」はカタカムナやフトマニに似ていて、その文字の持つパワーを象徴していた。

妖怪と人間世界のパラレルワールドをつくる「魔法陣」で、人間に姿を見られることを不快に思う妖怪は多かった。住み分けをしておいた方がお互いのため、ということでもあろう。

この「割れ鏡」名前さえないということも、強烈な自己承認の裏返しで人間を憎むようになったとも考えられる。

私たちは愛用品に名前を付けるのが好きだ。たとえば船のは女性の名前、車にも名前があるし、ともかくこの世に有るもので名前の無いものは皆無といえる。

名前がない、ということがこれほど重大なことなのだとわかる物語でもあった。

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