名前物語⑦『夏目友人帳』の《異質》な者は孤独という宿命
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名前物語⑦『夏目友人帳』の《異質》な者は孤独という宿命
『夏目友人帳』第7話では、森にすむ「子狐」が主人公だ。この子狐「かあさま」亡き後、1人で生きている。
森では、力も持たない子狐が生きていくのは大変だ。生きていくというよりも「生き延びる」サバイバルすることが、一番の優先事項と言えるだろう。
大きな妖怪たちに「役立たず、森から出ていけ!」と連日折檻されている。
妖怪たちのコミュニティで「役立つ」ということが、どういうことを指しているかは不明。
だが、
目障りだというだけで、「いじめ」のターゲットになっていることだけはハッキリしている。偶然に、夏目は子狐が折檻されているところに通りかかり、折檻を止めさせる。
子狐は夏目に救われたけれど、怖くて逃げてしまうのだ。
いつも折檻されていると、何よりも恐怖から逃げることが優先されるのはいうまでもない。子狐がまた森で妖怪たちに折檻されているところに、夏目とニャンコ先生が現れる。
今回は夏目が、「友人帳」を持っていることが、イジメていた妖怪にもはっきり認識されたようだ。
それは森の奥から聞こえてくる
「夏目様、名前を返してくれるという約束を守ってください」
という訴えだった。
その声に導かれ、夏目とニャンコ先生が森の奥に駆け付けると、1本の強大なご神木が夏目を待っていた。
その名は「さわらぎ」。名前を返されると、ご神木が光に包まれて「霊力」を取り戻した。
そのシーンを見ていた子狐「葛の葉」に名前を書いて夏目に「子分にしてください」と差し出すのだが、夏目は「要らないよ」と断る。
子狐は思い切って「名前」という「命」を差し出したのに拒否された。
がっかりした肩を落とした子狐の様子が、とても印象的だった。
しかし、弱虫、役立たずと罵られている子狐はけなげだった。
夏目に会わせてくれるという頭がライオンで体が龍のような半身半獣の
妖怪に騙され「要求」された「ヤマメ」を魚籠いっぱいに捧げる。
「お前はバカだな、騙されおって」と子狐を嘲笑しながらも「1日だけ人間になれる木の実」を投げてよこすのだ。ここでも「一日限りの魔法」が出てくる!
私たちは、望みをかなえるために木の実を食べてトランスフォーム
(肉体改造)する勇気があるだろうか?
子狐は「会いたい」その一心で木の実を飲み込む。
人間になると、夏目の匂いをたどって電車に乗り、雑踏にまみれ、異次元の人間界の恐怖に耐えて夏目の家を見つける。
夏目が家族団らんの夕飯を食べているシーンを見ると
「良かった!夏目が独りぼっちじゃなくって!」と呟きその場を去るのだ。
この子狐の持っている「利他」の尊い精神。
私はこの一言に涙目になってしまった。
何も持たないもの、誰からも相手にされていないもの、存在を無視されている社会的な弱者である子狐のもつ「圧倒的な慈愛」の精神。
子狐の持つ、夏目の幸せを確かめたい、夏目に幸せであって欲しい、そういう「魂」のエネルギーは妖怪たちには「目ざわり」で「邪魔」だったのだ。
このシーンまでは、子狐が妖怪たちに折檻される理由がわからなかった。
しかし、
ここにきて「妖怪ども」の汚れた波動のエネルギーが、子狐の清浄な波動のエネルギーによって、感化されることを恐れているが故の仲間外れだとわかる。
子狐が成長して、圧倒的な「慈愛」の波動のエネルギーを持つに至ったら、妖怪どもの存在意義がなくなるからだ。
子狐は夏目を観察している時に、こうも言っている。
「夏目はよく笑う、でもウソっぽい」と。
異質が同化しようとゴマ化していることを、見抜いているのだ。
最後まで「名前のわからない」この子狐、さぞや立派な名前を
持っているのではなかろうか?お稲荷大明神かもしれない。
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