『夏目友人帳』に見る言霊としての名前⑧人間と妖の恋
『夏目友人帳』に見る言霊としての名前⑧人間と妖の恋
夏目友人帳 第八話 「儚い光」は蛍の妖と人間の男の恋物語。
異種間恋愛についての話だが、夏目の能力についても言及されている。
あらすじは
ある沼に蛍を見にやって来た夏目とニャンコ先生。そこにいたのは、沼を見つめる男性と彼に寄り添うようにしている妖だった。その男性はかつて妖を見ることができたこと、ある日突然その目が妖を映さなくなったことを聞いた夏目。自分にも彼のようにずっと望んできた解放の時が訪れるのか。もう妖を見ることのない男性が、何故この沼に来ているのか知りたいと思う夏目は――。
夏目貴志は蛍を見るために行った沼で一人の男性を見かける。彼はただ沼の水面を見ていて放心しているようだ。
だが
彼に寄りかかっている妖を見て、挨拶だけでその場を立ち去る。
見られた妖の女性は夏目貴志の家まで追ってきて
「彼はもともと妖を見る目を持っていた。それが急に見えなくなった。年月が経って、もうすぐ彼が結婚するので一目だけでも彼に見られて祝福したい」と切なる願いを夏目に叶えて欲しい
とお願いする。
夏目は協力できるかどうかわからない、と答えるのだが、
その理由は女性の妖は「名前」をどうしても言わないからなのだ。
「名前」使いとしての夏目の力が発揮できない以上協力できないのも当然だと思う。
ニャンコ先生は名前を聞き出そうと「縮れ麵」だの「ちぢれ」だのヘアスタイルをからかうようにニックネームを付けるのだが、
彼女は「名前」を知られたら「命」を失うと頑なに思い込んでいて、名前を明かそうとしなかった。
夏目は妖を見ることのできる力を急に失ったということに衝撃を受ける。
夏目は意識していなかったが今は「妖」の見える目が自分の大切なものだと感じているからだ。
ギフト、としての能力だと気づいた瞬間だと感じた。
さて、
この男性「アキフミ」は蛍の妖を愛していてプロポーズしようとしていたことが判明する。
夏目は「なぜ?」の理由はわかっていなかった。
私は個人的には宇宙の采配、八百万の神々のなせる業だと思う。
異種間交配のタブーを犯さないためにギフトの能力が消されたのだと思う。
アキフミは「言えなかったけど愛していた」と告白するのだが、愛しすぎたから能力を八百万の神の摂理によって奪われたのだ。
日本昔話にもあるように鶴とヒトは結ばれない。
人間も妖怪もエネルギーとしての生命体としては同じであっても、交配となると「不可能」なのが自然の摂理だと思う。
このさき夏目が妖に恋をしないことを願う。