令和元年大相撲九月場所は、横綱不在で本当に面白くなかったのか?
今朝のTBSテレビ「サンデーモーニング」内の人気コーナー《ご意見番》の中での、張本勲氏の発言でまたネットがざわついている。
「横綱不在で、優勝ラインが11勝や12勝ではレベルが低すぎる…云々」(ネットニュースより)
果たしてそうなんだろうか?
確かに、初日に負けてあっさりと休場した白鵬に関しては、来年の東京オリンピックまで現役を続けるための延命策であり自分の功績を最大限に盾にしたずる賢いやり口だと思うので、それ自体を批判するのなら私も同意したであろうが、それには関係なく持てる力を発揮して素晴らしい相撲内容を見せてくれている《残された幕内力士たち》には、喝采の拍手を贈りこそすれ批判するなんて全くもって見当違いも甚だしいと厳しく指摘しておきたい!
さて、その私が元力士として私なりに感じた今場所の素晴らしい内容の相撲というのを振り返ると…
まずは幕内の前半戦を大いに盛り上げてくれた、168センチ98キロという超が付く小兵のイケメン関取【炎鵬】を取り上げよう。
彼が土俵上で対戦相手の幕内力士と対峙すると、まさに大人と子供という言葉がぴったりとハマる画づらとなるのであるが、ひとたび行司の軍配が返ればそのスピードと重心の低さに加え、驚くほどの柔軟性と運動神経を駆使して目まぐるしく動き回るかと思えば、勝負どころになるとここぞとばかりに正攻法の押しで相手を押し出せるパワーもある、まさに「技のデパート」ならぬ「攻防のシルクドソレイユ」みたいな力士なのである。
その彼のおかげで、今場所の幕内の土俵は前半と後半に二つの山場があり国技館もテレビ桟敷も大いに楽しめた事に異論を唱える人は居ないだろう。
幕内後半戦に次々と登場してきたのは、世代交代の波のど真ん中に居る関取たちである。
令和最初の幕内優勝を果たした《朝乃山》
もう4年も三役に在位する実力者《御嶽海》
破天荒で強心臓!新三役で勝ち越し《阿炎》
初土俵以来負け越しなしで三役目前《友風》
関係者が口を揃える稽古熱心なホープ《明生》に加えて、膝の怪我により大関から陥落して今場所に巻き返しを図る《貴景勝》と、いずれ劣らぬ百花繚乱である。
しかし、面子が揃っても相撲内容がそこに伴って来なければ意味がないのだが、今場所の相撲内容はここ最近に類を見ないほどのハイレベルな攻防と、最後まで諦めない粘り強さを各力士が発揮した素晴らしい場所であったと断言したい!
でも、ここに白鵬と鶴竜が居たらどうなったろう?
土俵がピリッと締まるのは間違いないが、ここまでの世代交代軍(?)の活躍ぶりを見る事が出来たのであろうか?
優勝のチャンスや希望が生まれ、目の色も変わり土俵の主役になろうという貪欲さも生まれたのだ。
「だったら横綱が居る時にもその貪欲さを出せよ」
そう、それこそがこの世代交代軍の弱点でもある。
実力はあるのに、横綱という存在感とその特異なオーラに気圧されてしまう部分が確かにあった。
その辺が、大昔の相撲取りだった自分からすると「やはり今時の若者だよなあ」と思ってしまうし、
だからこそ、御嶽海や現在の大関達は未だに殻を破れずにいるのだろう。(苦笑)
で、結局何が言いたかったのか?というと…
今回の素晴らしい相撲内容と、本場所を盛り上げられたという自信は、必ずやこの世代交代軍の覚醒を促す事になるだろうと信じてやまない。
横綱不在で大関も不甲斐なく、大失敗に終わる危険の高かった今場所を次世代を担う若手が見事に盛り上げて終わった事に、相撲協会と休んだ横綱達は心から感謝しなければならないし、張本氏もこの敢闘力士達にこそ「あっぱれ」と言えるジジイであって欲しい。
ちなみに、これを書いているのは9月22日日曜日…つまり九月場所千秋楽の日の13:33である。
つまり、今場所の優勝者がまだ決まっていない段階での投稿である。
今場所の優勝者が誰であれ、敢闘力士達に対する評価は一切左右されない!という意味である事を最後に記して、今回の投稿を締めたいと思う。
長々と書いて参りましたが、読んでいただきありがとうございました。またお会いしましょう。