#6 黒色皮膜x3D配線形成技術のご紹介【課題解決事例】
今回は、大手電機メーカー様の「ウエアラブル機器に迷光防止の機能が欲しい」という、課題解決のお手伝いをさせていただいた事例をご紹介します。こちらは、当社の黒色めっき「スゴクロ(凄黒)」と、3D配線形成技術「3LM」の、2つの技術を同時に採用いただいた非常に珍しい事例です。
・黒色めっき「スゴクロ(凄黒)」
…めっき皮膜の表面を複雑形状にすることで、低反射の黒色皮膜を成膜する技術です。皮膜の形状を制御することで、反射率は可視光領域(380~750nm)で1%以下を実現しています。塗装とは異なった金属の皮膜のため、アウトガスが出ないのが特徴です。
・3D配線形成技術「3LM」
…レーザーによる配線描画が可能な技術で、LDS(LPKF Laser & Electronics株式会社様が開発した3D配線形成技術(MID技術))を中心に当社で開発した技術です。金属錯体が分散した樹脂材料にレーザーを照射することで、照射部分のみ選択的に皮膜が形成できます。立体物にも直接配線の形成が可能なため、省スペース化が期待されます。
当時の状況を営業と技術担当へインタビューしました。
―まず、案件のお話を伺ったきっかけと、お客様の課題はどのようなものだったのでしょうか?
営業:実は、お客様とは別案件を目的に技術紹介をさせていただきましたが、その際に何か困りごとがないか伺ったことが本件のきっかけとなりました。お客様は、ウエアラブル機器の液晶画面に迷光防止として黒色の塗装をされていましたが、密着が悪く剥離してしまうことが課題のようでした。そこで、当社の黒色めっき「スゴクロ」を紹介させていただきました。
※黒色めっき「スゴクロ(凄黒)」のイメージ画像
―別案件でお会いしたのがきっかけだったのですね。そこから「スゴクロ」だけでなく、「3LM」も採用されることになった経緯を教えてください。
営業:お話を詳細に伺うと、素材は軽さを重視した黒色のPC(ポリカーボネート)で、更に反射を抑えるために部分的に黒い塗装をされていました。素材にマスクをすることで一部分のみに塗装を施されていましたが、実はこのマスクを行う工程も手間であると伺いました。そこで、黒色めっき技術だけではなく、樹脂材料に直接配線の形成が可能な当社の「3LM」技術とも相性が良いと思い、ご提案させていただきました。
―そうだったのですね。その際のお客様の反応はいかがでしたか?
営業:現行品の塗装部分での課題を解決できるのであれば、と大変興味を持っていただきました。ただし、「3LM」を適用するには、樹脂材の変更が必要となるため、まずはレーザー照射のみで黒い色味が得られないかテストを行いました。(樹脂材に直接レーザーを照射することで、表面が粗化され、反射を抑える効果が期待できます。)しかし、レーザー照射のみでは十分な性能が得られなかったため、レーザーによる配線描画が可能な樹脂に素材を変更し、テストさせていただくことになりました。お客様は、マスク工程が削減できるのであれば、と樹脂材の変更には比較的スムーズに応じていただけました。
―結果として、レーザーの配線描画が可能な樹脂材に素材を変更し、「スゴクロ」と「3LM」を採用いただきましたね。この2つの技術の組み合わせは当社でも初の試みとなりましたが、社内の反応などはいかがでしたか?
営業:技術的にも実績がなく、品質が厳しい大手メーカー様ということもあり、当初は反対の意見が多くありました。しかし、以前より組み合わせたら面白いだろうという想いがありましたので、生産現場の人たちにも協力してもらい、無事に実現することができました。
※3D配線形成技術「3LM」のイメージ画像
―技術開発において、苦労した点はありましたか?
技術担当:「スゴクロ」はこれまで素材が金属ばかりでしたので、樹脂上で黒色の色味を出すのに苦労しました。当社の黒色めっきは、皮膜の形状を制御することで反射率を抑えています。素材が変わるとめっき成膜時の電流の流れ方も変化し、金属上とは最適なめっき条件が異なるため、新たに成膜条件を検討する必要がありました。
―2つの技術の組み合わせが新しいだけではなく、「スゴクロ」を”樹脂材”に施すということも、当社としては新しい試みだったのですね。
技術担当:そうですね。「スゴクロ」以外の黒色めっきも試しましたが、最終的には「スゴクロ」で満足いく条件が得られ、お客様で必要とする性能をクリアすることができました。また本件によって、当社のめっき技術もレベルアップすることができました。
※黒色めっき「スゴクロ」の表面形態。
―本件は量産させていただくことになりましたが、当社の技術で決め手となったのは、どのような点だと思いますか?
営業:まずは現行品の課題であった塗装皮膜の剥離を、「スゴクロ」で解決できたことが一番の決め手であったと思います。更に「3LM」も組み合わせることで、マスク工程の手間が削減し、配線の見切りも向上したこともご評価いただけたのではないかと思います。また、お客様は一刻も早く製品の切り替えをしたいという要望もあり、そのスピード感にも応えられたことも大きかったと思います。
―そうでしたか。当社の技術でお客様の課題が解決でき、嬉しく思います。お話を聞かせていただき、ありがとうございました!
以上、今回はウエアラブル機器に迷光防止の機能が欲しいというお客様に対し、当社の黒色めっき「スゴクロ」と3D配線形成技術「3LM」の組み合わせ技術で課題を解決させていただいた事例をご紹介しました。
当社には様々なめっき技術がございますので、このように当社の技術で解決できそうな課題がありましたら、ご提案させていただきます。また、当社の営業担当は全員が技術出身ですので、別件だとしても何かお困りごとがある場合はぜひお声がけください。
<ご紹介技術>
・黒色めっき「スゴクロ」
・3D配線形成技術「3LM」
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