桜を見に行った。
毎年桜を見ているはずなのに、
みんなまるで初めて見たようなリアクションをして写真を撮る。
そして、今年で最後なみたいな顔して、散るのを名残惜しむ。
今年も多くの人間の写真フォルダに桜が増えた。
私の友人も写真をみんなと同じようなリアクションで撮っていた。
そして、今年も彼女の写真フォルダに桜が増える。
このままじゃ彼女のフォルダはいつか桜ばかりになってしまうではないか。
そんな不安が渦巻いた。
去年も見た桜。
毎年咲く桜。
それは桜で変わらないのに、
みんなが感動する。
桜の価値って一体…。
千鳥ヶ淵緑道の一本の椿は
誰にも気付かれないまま咲いていた。
みんな、椿の横を通り過ぎて
桜を見に行く。
彼女に話すと、申し訳なさそうな顔で
椿の写真が一枚だけフォルダに収めされた。