999にちかっく足おお

悪魔は6つを3つもつとか。そう聞いた。人魚は食うと死ななくなるとか。そう聞いた。星は温暖化すると氷河期が近いんだとか。そう聞いた。

ぼくは聞いたことで出来ている。体はパンと弁当と給食で。頭のなかは、父さんの罵倒する声、母さんの泣き声、ふたりで叱るときの大声がよく残っていてたまに自動再生される。

ゲーム機はもってないけど父さんのノートパソコンでアプリを遊んだりはする。もっと遊びたいけど課金はぜったいにダメだ。皆の持ってる携帯型のゲーム機なんて、ほしい、の一言だけでも叱られそうだからイヤだ。
ぼくのことで、学校の先生が来ること、なにか役所のひとがくることがある。 

面倒くさそうにぼくを見下ろす、父さんと母さんの目は、嫌いだった。
ぼくをゴミにしないでって思う。

めずらしく、父さんと母さんは二人だけででかけて、ぼくには明日のぶんのパンまでふたつ、置いていった。お腹が空いてたからふたつとももう食べてしまった。仕方ないけど明日くらいのツラさは慣れてるから平気だろう。
ノートパソコンをひっそりつけて、無料で遊べる数少ないゲームを探す。無意味で単純なポチポチとクリックするだけのゲームばかりで、学校ではともだちは誰も知らないゲームばかり。でも仕方ない。

スロットの遊び。これはいい。父さんと話がたまに合うから、すると父さんはぼくの頭を撫でて褒めることがある。スロット、パチンコ、だからぼくはよくこれの無料ゲームをやる。スロットの文字が『999』に揃うと、ぼくのなかで何かがはしゃぐ。

6つが3つで悪魔の証。そう聞いた。
父さんも、母さんも、ぼくがそんなやつになったら、やっと、ぼくを見てくれる?

悪魔みたいな、人間になれたら、父さんと母さんの側に行けて、いっしょに外に連れて行ってくれる?

スロットで遊んだりあと、『悪魔』を検索した。ひどい絵がたくさんだ。
でもこれが、ぼくがもっと愛してもらえる、ヒントになるんだ。きっと。


END.

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海老かに湯
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