怖い妖怪は来世で強くなる。
あゝ
断絶とは
こうしておこる40年以上前、まだ私が働いていたころの日記をふと手に広げた。まめな性格ではないから、薄いノートに3年分ほどが凝縮してあった。
けるど、そのページは、それだけだ。
空白。余白。ポエム。それきりで終わる、一枚きりの記述。日記にしても脆い、日記の役目を保たない記載方法だった。
私は、安堵している。
私はこれを探していたのだから。
そう、ずっと前、幼稚園勤務で児童たちと話しているうちに、私はこの未来を明確に悟っていた。私は確信があったから、ふと見つけた日記ノートを一枚ずつめくったのだ。
断絶。泡になって溶けて、年寄りの口伝しか残らないような曖昧なものに化ける。化け物がそうして化物語になるようだ。
孫が、赤鬼も青鬼も知らず、カチカチ山もたぬきもきつねも知らないというものだから。
孫にとって、それらの話は、もう化物語になったようだ。
昔話が溶けてゆく。時代に消化されて空という胃袋に吸われる。人間の歴史、積み上げるものなどいかに脆弱か、残酷にも突きつけてくる。
お伽噺を知らない孫たちが大人になる、そのとき、こんな昔話たちは化物語になるんだろう。
文化が死ぬ、絶後の吐息を、首筋にかんじた。
ひんやりしている。
怖い妖怪の話でも、聞いたように。
END.
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