解体ラブスト-ショート-9
腐ってないか。人間が。
「ソープなんてやんない。橘さんだってあたしにはよくしてくれてた! あたしはそこらの馬の骨とはちが」
今さら、腐っていないなんて。どのくちが言う。ブランド服で着飾った女と黒服のボーイとの口論を目の前にしながら、夕飯がわりのサラダチキンを齧る。缶コーヒーを飲み終える頃には女はブランド服をよれさせて、黒服ボーイに引きずられていった。
橘さん、たちばなさん、タチバナサン、うわ言を繰り返していた。
ボクは、別に。何もどうということはなかった。
それに、それ、ボクの名前ですらないし。
それに。どこぞの馬の骨の腐ったモノにずっと操られていたなんて、そんなこともまだ解からない、解からないのに期待をする、そんな女なんて履いて捨てるほどいる。
代わりは、いくらでもいる。
「新宿3号でよかったんですよね」
頷く。今日の仕事は、終わり。
(ボクでさえ代わりなんてどうとでもな)
店を出て配車を待つ。行き先のホテルはそっけないもので生活感も無い。ボクは生きてるようで死んでいる。
死んでいるから。
ボクだって、ソープに捨てられて1日を終える、そんなものだ。毎日、毎日。
END.
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