過程なんて省くとして
海の水を単なる『水』変えて、魔女は水道局をやってみることにした。副業である。(本業の魔女職は、なんせ恨みも買うことが多いから、なにかと面倒なのである)
しかして魔女は、これを機に、人類死すべしの厄災の魔女となった。
過程は省く。
いちばん大事なところであるが、省く。
魔女は海を商売道具にして売りさばこうとしたが、それも海への愛があってのこと。海が好きだから、海を道具に決めたのだ、ところが、人間たちときたら……。
過程は省くのである。
厄災の魔女は上陸を果たし、海の代わりを名乗って人類死すべしと復讐に手をかけた。死すべし、愛するものを害するもの、死すべしと。魔法を使って重火器を花に変え、人間たちの頭をいじって生命としての根幹を作り変えた。のちに、この人類は、『妖精』と呼ばれることになった。
魔女は、人類抹消を終えて、海へと帰った。詳細は省く。もとどおりの生活をはじめて、やがてまた、復讐心が火を点した。海にゴミが流れてきた。
理由も、過程も、もはやいらない。
魔女は、海から今の現人類たちへと向けて、次々に厄災を届けた。人魚姫、しけ、嵐、大雨、日照り。海を通して操れるものを送り続けた。
やがて、魔女本体もまた、厄災として上陸するだろう。人類がまた地上に湧いてでてきたのだから。
過程は省くとして、あなただって、目障りな虫にきがついたらば叩き潰すでしょう。
過程は、省くとして。
過程なんて、不必要なものとして。
END.
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