愛あるハゲタカは知られない

死肉をむさぼるハゲタカは、世間に気づかれていないが(そんなものを気にする者がどうかしている)ほとんどが不老不死の怪鳥である。海から流れてきた死肉も食べるからだ。

海の死肉はさまざまな細胞の宝庫である。
なかには、人魚伝説にうたわれるとおりの生きものがいた。不老不死にして不死の霊薬たる肉塊になれる、人類はいまだ存在を発見できていないマーメイド種族。彼らの一部がちぎれたり、怪我したりなどして、肉片は海辺に打ち上げられる。

ハイエナのように怪鳥は集まる。鳥は、マーメイドを本能からして知っていた。だから小鳥に優先して食べさせる。若い鳥を先に食わせる。海からの不老不死の贈り物似、きちんと気がついている。不老不死を得た怪鳥たちに生まれた叡智がなせる配慮だった。

こうしてハゲタカはほとんど不老不死だけれど、不老不死とは、外敵、さらには発砲して狩猟されて皮を剥がれて調理までされて鍋の具にまでされるともう、効果はお手上げだ。不死ではあったけれど食われるまでされたら消化されてしまう。ハゲタカの不死性に気づく狩猟者は皆無だった。

ハゲタカが家族思いのこと、仲間思いなこと、人魚の肉をみんなで分けて食べるほどの優れた社会性があること、愛がある、こと。
それらに気づく者もまた皆無、である。

言葉がつうじない鳥と人間との断絶はそれほど深いものだ。
人間と人間でさえ、海溝ほどの断絶があったりするのだから。

ハゲタカは、自分の子どもたちにせっせとマーメイドの死肉を食わせる。今日も明日も。

それをやっぱり人間は誰も知らない。

いつか、人間が死肉を食べるまで食糧難になるとか意識改革が起きて死肉を再利用して食べるとか、そんな日が来るまでは、やっぱり誰にも知られないだろう。

ハゲタカの愛もまた、知られない。
目に見えない、本当の姿や愛のかたちや不老不死や霊薬は、やっぱり人間にはよく見えないものだった。


END.

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海老かに湯
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