まだらもよう怪談
まだら模様の人魚姫を知ってる?
近年、海ではまことしやかに囁かれる。なんでも、人魚姫が人間になり損なって、『まだらもよう』の半人半魚になったらしい。
まだらに、目が人間のもので、片目は魚のもので、皮膚もすべてが人間と魚がまだらに分布する。斑点のように魚と人間が雑じっているのだと言う。雑な魔法だ。
魔法は大失敗して、その怒りで人魚姫が魔女を絞め殺したらしい。そんな噂もある。
しかし、魔女を殺してしまったから、まだら模様の人魚姫はもう二度と元に戻れなくなってしまった。人魚姫はもう、人間でも魚でもない、異界の者になってしまった。その人魚姫は悲しみと怒りで気が狂ったように故郷を逃げ出して、海を彷徨しているらしい。亡霊のようにして。
ここ数日、まだら模様の目撃談があった。海はざわつく。なにせまだら模様は凶暴で手がつけられなくて、もはや頭もおかしくなって、人間も魚もワカメも何もかも目についたとき腹が減っていれば貪り喰うのだとか。何を答えてどう慰めようが、手負いのシャチすら殺すように襲ってくるのだとか。
その人魚姫は、遭遇すると問うそうだ。
「ねえ、あたしッテ、きれい?」
まだら模様の魚と人間がごっちゃになった面妖な面相で、奇っ怪な問いかけ。
怪談の定番である。
真偽はさておき、海でも陸でも怪談はさほど変わらない。らしい。
END.
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