猫の永遠ドリーマー
人魚姫と猫はともだちである。ぐうぜんに出会った2匹は、岩陰でよく遊び、猫は魚を捕まえて、ときには人魚姫が自ずと手を伸ばして魚を捕まえた。
しかし、猫はやがては置いていく。老いていく。彫刻像がごとき人魚姫とは、ちがう。
人魚姫は、その心もまた、彫刻像がごときケタはずれの深淵をもつ者であった。人魚姫は、ある朝に、自らの尾びれと魚の下半身の肉をするどい岩の欠片で切り出した。
青い血がどくどく流れて、毒々しい青みが海を汚染した。
さぁ、お食べ。
まだかろうじて若さの残る猫へ、その肉は差し出された。
猫は、ねこである。魚を食べた。そうして100年、200年、楽しい毎日をつづけてやがて知恵をつけて、そうなってはじめて猫は知った。人魚姫が自分に施し、改造し、変幻させたことを。
猫はもはやネコではなかった。人魚姫たちと同じ、あやかしの類であった。猫はこれをようやく知って、しかし、だから何かを変えようとはしなかった。別に、かまわなかった。
人魚姫との楽しい毎日が永遠につづく。
なにもわるいことはない。
楽しいから。
猫は、うつくしい夢を生きる。夢を現実にして生きる。うつくしい日々を。
ビューティフル・ドリーマーの人魚姫と猫は、2匹の幸せをつねに大切にした。
地球が終わる、その日まで。
END.
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