みっつめのミツメ
ミツメの由来は、目がみっつある子どもと呼ばれたから。でも額に第三の目があるわけでもなく、体のいずこに斑点があるわけでもなく。昆虫のような擬態でもなく。
かれは、舌先が過敏症すぎたから。
舌で触れただけで目で見るみたいに相手の様子を当てられた。
ときに、目で見るよりも正確だった。雨の日は顕著に。いつしか目がみっつあると言われて、人伝のそれは「目がみっつある子ども」。でも本当にはみっつめの目はないから、でもわかりやすくしたくて「ミツメ」くん。それが彼の二つ目の名前となった。ひとつ目の名前なんて、うっちゃられて、どこかに行ってしまった。ミツメだってろくに大事にしていない。
「名前、もういっこ増えたところで変わらないですよ。ぼくの父さん母さんがくれた名前でさえ煙になって消えてる。ぼくの舌の感覚だけが、ぼくにとってはすべてですよ。ミツメの名前は3つでなくてふたつ、それを教えてくれるのが、ミツメがくれた名前と順番です」
ミツメくんと話していると、順番がよくわからなくなるとも、評判だった。
今は何番目?
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