天使クロッカス
天使クロッカスは面倒くさいので提案した。
「デスゲームにしません? 恋した者から脱落するルールにしましょう。できるだけ面白くなるように、種族として全員に美しい外見を与えます。恋に落ちやすいよう、いくら年月がすぎても心は少女の年齢にしましょう。どうですか? これなら、不老長寿の種を海に蒔いても、そう簡単には繁殖しませんし、他の生物に迷惑をかけませんし、不老長寿であろうと一定の個体数に制限されることでしょう」
「おお、天使クロッカス。そなたは本当に地頭が優れていて性根が曲がっておる!」
神は、おおげさに嘆いて額に手をやった。天使クロッカスは、キューピッドのくせにこういうヤツだ。
だから、神様は気に入られている。
神は、ひとこと告げた。
「採用!」
「ありがとうございます」
神の謁見間に立つ衛兵たちなどは、また悪い癖を……、またしょうもない生き物を創造しちまって……、などと思うが黙って職務をこなし、皆なにもない真ん前を見つめる。
広間にて、神と天使クロッカスは、早速、次なる新種のデザインにとりかかっている。
「そうです。人間に恋をしやすいよう、コイツの体半分は人間にしてしまいましょう。きっと脱落者だらけになりますよ。それに人間は寿命も短いですから共倒れしますよ」
「おお、天使クロッカス! おぬし、悪魔かね?」
神は、天使クロッカスの言うことをすべて採用した。
斯くして人魚姫は海に蒔かれる。
キューピッドが仕事をしないで済む、しかし感情のエネルギーは大量自然発生させる、現代日本用語でいうなら太陽光発電システムのような連中である。天使クロッカスがぜんぶ元凶である。
END.
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