出会い系で会う美女の話(たんぺん怪談)

想像以上の美女だった。出会い系アプリで写真を見てはいたが、実物のがもっときれいだ。髪はさらさらして肩をすぎ、風が吹くごとにフワリと美しい。

これは、ラッキーだ!

こんなイイ出会い、はじめてだ。

うかれて美女と食事する。彼女はデザートのプリンとミネラルウォーターだけを頼んだ。お会計にもやさしい。痩せすぎている気がするが、スレンダー美女なんだから当たり前だなと納得した。これは幸運だ。とんでもないアタリだ!

美女に、次の約束をもちかける。
美女はくちびるの口角をあげて「海場がいいです」と言った。

うみば?
うみ?

冬なのに?

ふしぎに思う。だが、どうでもよいことだ。ふたつ返事で了承してみせた。そして海。美女は、冬のカラカラした乾燥風に揺らぎながら、砂浜に立っていた。

素足で、青いワンピースを着て。

それから彼女はろくに話もせず、表情は「海場」と言ったときと同じで、海の水平線を指差した。世間話の、低いトーンの言葉だった。

「家があちらにあるんです。いきましょう。新しい、しゃれこうべが欲しかった。ツルツルして可愛かったのに割れてしまった。次は、大事にしてあげるからね」

「……はい?」

美女は、それはひどくうつくしく、ゆうびに幽幻に、微笑んだ。目も笑ってうれしそう。手をつかんできた。信じられないぐらい、強いチカラだった。腕力はボディビルダーの大男みたいだ。

「行こう」

抵抗ができず、海にひきずられる。いちばんお気に入りのパンツが波にびしゃびしゃになった。やめてくれ。

それが、最期の呟きになった。
怖くて。声がだせない。声がだせない。人魚姫みたいな童話を、思い出した。

それが、さいご。


END.

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海老ナビ
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