獣型の神さまの結婚(姉弟)

結婚式をあげましょう!

ただし、皆さまハダカで。
ハダカが正装になります。
ここはあなたたちが信じた果ての異界ですから、異界に入るためには人間の外殻を捨てなければなりません。

さぁ、文明と人間の象徴である、服を脱いで。
全裸になるだけではヌーディストビーチと変わりませんから、四つん這いになって。

獣がまぐわるように好きにして。なにをしても結構。人間の社会ではないのですから。

花嫁は異界からいらしてくださった我らの神、上半身だけのお美しいすがた。
花婿は神が選ばれた当家随一の色男。
さすが、お目が高い。美男美女の結婚を繰り返してきた我が家でもさらに結晶化された美を誇る、我が三男をお選びになるとは。

美しさなら、どこの女にもひけをとりません。最高の美人は美少年と古来より石像や絵画で語られているとおり。
さぁさぁ、三男と我らの救いが一つになるとき、結婚式!

我が一族はこれより神の血を植え付けて生きるのです。上半身しかなくとも神は神、三男を欲するなら捧げましょう、結婚式をはじめましょう!

…………あら、息子が肉の塊になって引きずり込まれてしまいました。三男だから、いいですけれど……。
せっかく、美しく出来上がったのに、もったいない。しかし神がそうしたいならどうぞ。どうぞ!

神は、男の下半身を手に入れて、女の乳房を尖らせながらふりかえった。
両性を持つ、神!!

「おお、おおお……!! 我らがゥッ」

「さっきからうるせーんだよババア。クソ毒親。死ねよ」

三男の声になって、神なるはずのものが、結婚式の司祭の頭を握りつぶした。
参列する獣たちが動揺して、逃げるそぶり。すかさず、獣の王が制止した。

「これよりは僕が当主となる。僕にしてほしいことがあるってさ。ちょうど僕もそうだから僕たちは取引した。僕と、このクソ家の子を生贄にしろとだと。血はとびきり濃いの。で、さぁ」

神なる三男は、目を吊り上げて、ハダカになって四つん這いになっている黒髪長髪の女をにらむ。

「姉さん、今ここで結婚しよう。ヤろう。知ってたでしょ、僕がずっと姉さんが好きだったことは」

「は……、え、ぁ…?」

瞬間、神奈木智彩夏(かんなぎあやか)は、人間に戻ってしまった。異界から漏れてしまった。

シスコン、ブラコン、そうからかわれた。そんな仲であった。
とびきり仲良しの姉弟、であった。

そのとき、までは。


あとは獣たちが異界に引きずり込んで花嫁を祭り上げて神なる少年の思うがまま、人間などこの場にいらぬから、蹂躙されるだけである。


END.

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海老かに湯
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