織姫さまの殺人

織姫さまは、牛飼いの彦星とあまあまいちゃらぶしたがるばっかりに、手厳しい罰を与えられてしまいました。

一年に一回しか、会えない。
神さまとこの世の人間たちの願いにより、そんな宿星を与えられてしまったのです。

織姫さまは、おおいに悲しみました。やがて織姫さまは諦めてこの理を受け容れました。けれど、織姫さまは、同時に炎を燃え上がらせました。人間たちめ、おのれ、神様め、おのれ。天上人である織姫は、深海に足を運べるほど、呼吸はできません。

そこで、恋には煩い、マーメイドたちの手を借りました。

マーメイドたちは織姫と彦星の話を知っていました。恋のうわさ好き、恋愛話が大好きなマーメイドたちですから。2つ返事でマーメイドたちは深海の魔女への伝言と、代償としての彼女の髪を、受け取りました。

その日の七夕はよく晴れていました。
流星も見られる。
そんな観測予報がありました。

魔女の呪い、マーメイドたちの能天気と無関心と恋愛脳、そして織姫の復讐。全てが合わさって、その日の流星は、隕石になって、地表へと降り注ぎました。

地表が血みどろの阿鼻叫喚になるなか、織姫は、頬を赤らめて彦星に1年ぶりに再会しておりました。

「彦星さま!」

「織姫!」

ふと、彦星さまは、言いました。
「今年はあまり見られていないな。めずらしい」
「お嫌ですか?」
「いや! 毎回、見世物にされてるようで、きらいだったんだ」
「あら、わたくしもです!」

微笑んで、ふたりは幸せなキスを交わします。

一方、血みどろの地表では、人間たちが死んでいるものだから、マーメイドたちが姿を表しておりました。そして、めずらしい、キラキラするガラスを拾っておりました。隕石の衝突によってできた、天然のガラスです。

「きれい」
「気に入ったわ」
「これなら、もっとやまほど欲しいわね!」

ぐしゃぐしゃの汚い死体には目もくれず、彼女たちは無邪気に、宝物拾いをしていきました。たまに、人間がこぼした目玉を拾ってみては、潰して、ゼリィ状の液体を楽しみました。

その日の七夕で味を占めて、やがて、七夕は、災害の日となり、人間たちにとっての地獄となりました。

織姫さま、マーメイドたちには、どうでもよい話でした。


END.

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海老ナビ
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