ボール喰いのソラ青し
親子でキャッチボールをしていると、しょっちゅうボールをなくす。
バッティングセンターでボールを打ち上げると、たまに球を見失う。
草野球でボールをホームランにすると、だいたい球を見失う。
プロ野球でボールを空高く打ち上げると、観客や選手たちにキャッチされる。行方不明にはならない。記念ボールになる。それは、狙っているやつらばかりだから、みをひそめて隠れているおかげだ。
魂は森羅万象にやどる、それは惑星のとくちょうである。
この星の特性、性格、本能、生き方というものである。
星も生きているのである。
ソラもまた、青き色を気分で変えて、シグナルの色を変化させて、ソラを紅くしたり紫に染めたり黒く変質したりさせる。ソラもまた、生きものだから、こっそりと捕食をおこなう。ただ、空の遥か上空でのことだから、人間には観測できない。でも、例えば、隕石がめったに惑星の地表にたどり着かないのは、ソラが通過するときに9割以上をもぐもぐしてしまうから。地球の防衛機構のひとつでもある生命体、それがソラ。地球をぐるりんと囲っているのだから、最強の防衛ラインなのである。
そんなソラも、たまぁに、遊びごころでつまみ食いをする。
その代表が、野球ボールである。
派手な快音を鳴らして空高くまで打ち上がってくるはやい速球。あらまっ! と、ソラはすばやくぺろりする。竹に流すソーメンをぱくつく、ゲームみたいなもの。ぺろ! ぱくり!
行方しれずの野球ボールは空に吸い込まれるように消える、と、目撃証言は数多い。
今は、まだ、UFOの目撃談レベル。
雑談、人為的ミス、見逃しやがって、なんて話だけで済まされている。
ソラの生きる姿を見るときは、地球全滅寸前、過去の事例から引用すると恐竜絶滅ラインの危機的状況に観測できるものだから、人類にしてみれば生涯、見ないほうが、気づかないほうが、思いつかないほうが、よい。
そんな生きもの。
そんなソラが、惑星ごと、私たちを覆っている。
移り変わる空の青さに目はくらむ。
END.
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