心のリボ払いってある?

リボ払い。きんだんのかーど。

金の使い方、ちょっと賢くないよ。

そんなふうに言われるとリボ払いは悪魔が作ったシステムのようである。消費社会の産んだもの、つまりわたしたちの産んだもの、後払いにして問題は先送りにすること、知恵のはたらく人類らしいシステムなのだが。

しかし、わたしは今、彼女への感情を後払い、利息つきのリボ払いにするか、悩んでいた。
あとから爆発するだろう。なにせ浮気をされたのだ。同窓会で再会した友人と連絡をとりつづけている妻、しかし肉体の関係なんてない、ただの友達だよと言いはる妻。

この追求は、どうするべきか。
リボ払いが頭に浮かんだ。後払い、先払い、ただし利息つき。消費社会の産物にして怪物たるこのシステムに則って、私は彼女を許し、その罪を泡にして消えたかのように信じ込むべきだろうか?

いや、いや、いや。
やめろ、やめろ、やめろ。

賢くないよ。そんなふうな使い方。
摩耗するのは財布のなか、今回にしたら心のなか、私の感情はすり減るのだ。摩耗するのだ。リボ払いにしたって必ず、精算のときが来るのだ。

「あなた。ごめんなさい。本当にただの友達なの。それともあなた、私に男友達すらも許さないって言う気? それはないんじゃない?」

妻がだんだんと攻撃姿勢を見せてくる。ああ、リボ払い。リボ払い似してしまいたい。

利息なら払うから。
逃げ出したい。妻から。いいや、面倒くさく暴れるわたしの心の暴走から、解き放たれたい。この怒り、憎しみ、悲しみ。そこから逃げていきたい。

先にあるのは、結局は利息がプラスされて増幅してよどんだ、同じ、いやつり上がった価格の問題だった。

ああああああああ。それでも。
いいだろうか。いいだろうか。リボ払い、リボ払いして、妻とのひとときを、担保させてもらえないか。わたしの安寧を確保させてもらえないか。

正味、この女がどうだろうと、わたしは本心ではおそらく信じていない。不義があろうがなかろうが。リボ払いなんて発生する時点で信頼の糸は切れているのだ。おまえなんか信じない!

ただ、心が。
お金が底につくように。

心が、駄目だ。もういやだ。リボ払いとはこうして選択されるのだろうか。金の問題ではなくて、心の問題なのか。

わたしは、言うしかない。

『リボ払いします』
「いいよ……。わたしが悪かった。変なことをかんぐって、すまなかったね」

「わかればいいのよ」

妻が勝ち誇ってため息などしている。
ああ、ああ、利息が増えるだろうが!!


END.

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海老ナビ
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