ダムさん殺し
「あれはダムさんっていうらしいよ」
友人のエリカが空気を堰き止めている、巨大な壁を指差して言うらしいが、ハルカはちっとも納得ができない。名前を知ったからなんだというのだ。
壁を叩いて、だむだむ、音を鳴らした。ダムさんの名前の由来はこれだろうか。
「海を分断するなんて。アッチの海に、きれいな白い砂浜があるんですぅー。私達を閉じ込める気ですか? ダムさん!」
だむ、だむ、外海でそう呼ばれているらしい壁は、穴がある。そこが空くタイミングで滑りでれば外海へとゆける。
でも、一方通行。上流に戻ってこれないから、ダムさんについては諦めている仲間がほとんどだった。
「いいじゃない。ここで一生を終えたって。別に大した問題があるわけでも」
「私は自由よ。ダムさんはきらいよ」
ダムをだむ、たたいては、どうやってこいつを殺してやろうか、なんてハルカは考えるようになった。怪異のチカラが要りそうだ。外海のほうが、強力なチカラを持つ輩がたくさんいるのだけれど。
ハルカは四方八方を飛び回って話をつけた。そしてある夜、ダムさんを決壊させた。たくさんの外海の陸を歩く人魚みたいな連中が死んだそう。流されたとか、壊されたとか。
ハルカも、外海に出た仲間達もとくに気にしなかった。陸上の輩がよく海にやってくれることだからだ。お互い様、である。
ハルカは、ダムさん殺しの異名を得た。
END.
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