とある心配

「目撃者の証言によると、窃盗犯は塀を乗り越えて逃走したとみられます。このことから背の低い容疑者Aの可能性は低く、背の高い容疑者Bの犯行と見てまず間違いないでしょう」
「何言ってるんですか? 店頭に並んでいた土産の饅頭を盗んだのは猿ですよ?」
「えっ?そうだったんですか?」
「そうだったんですかじゃないよ、この税金泥棒」
「代わりの者が参りますのでしばらくお待ちください。わたしはこれで失礼します」
「まったく、この国は何を考えているのか… 人件費削減のためにAIを導入しても猿一匹捕まえられやしないじゃないか。結局、猿を捕まえるのは人間だというのに削減してどうするんだ。そのせいで超高齢化社会が終わった今、AIだらけで人間がいないじゃないか。猿に商品を持っていかれるのも心配だが、私が壊れたら一体誰が修理してくれるのか心配でならないよまったく…」

✳︎推理モノ縛りのショートショートで不採用
他の作品よりもコンパクトにまとめたし個人的には上手くできたと思っている。
土産屋の饅頭を猿が盗むというのは「観光地あるある」だし、夕方のニュースとかでも取り上げられるので分かりやすいだろうと主軸に置いた。
テンポ感を出すために「犯人は誰か?」→「なぜ刑事はそんなことも分からないのか?」→「なぜAIだらけなのか?」→「AIを直す人間が居なくなったらどうするのか?」と謎が次の疑問へと移行していく作りにした。
最終的に読んだ人が「これは人口減少の問題を書いたものなのか」と思ってくれたらそれでいい。
#小説 #ショートショート

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