二度目の月曜日

これは、とある優秀警察官による取り調べの記録である。

月曜日。取り調べを開始。容疑者は否認。顔にライトを当て続けたが自白せず。
火曜日。引き続き容疑者は否認を続ける。「家族や仕事場の人間に迷惑がかかる、これ以上の否認は得策ではない」と自供を促したが黙秘。平手で3回頬を叩いたが黙秘を続けた。
水曜日。取り調べ直後に容疑者が泣き出した。自供するかと思い、調書を読み上げるも「そんなことやっていない」とわめき散らしたため、みぞおちを数回膝蹴りしたら大人しくなった。昨日と同様に黙秘を続けたため、顔に数回張り手をした。
木曜日。黙秘を続ける赤い顔の容疑者を見ていると苛立ってきた。「早く楽になりたくないのか?」と問いかけてみたが、沈黙を続けたため数回蹴り飛ばした。すすり泣く声は耳障りだ。
金曜日。イライラしていたのでタバコを咥え、煙を容疑者の顔に吹きかけた。その際、容疑者が嫌そうな顔をしたのでタバコを身体に押し当てた。さっきまで黙っていた人間が熱がって飛び跳ねる姿は愉快だ。気づいたら箱の中のタバコは無くなっていた。
土曜日。衰弱しているのか動かない。拘置所でもこのような状態だったと報告があった。罪を認めると思い調書を読み上げると、微かな声で「やってません」と言った。「ボソボソ言っていたら聞こえないだろ!」と蹴り飛ばしたらパイプ椅子ごとひっくり返った。その際、頭をぶつけたらしく流血。この日の取り調べは早々と終了した。
日曜日。昨日の取り調べは早く終わってしまったので、早朝から詰問を続けた。容疑者に何を言っても反応がない。何発も殴ったが、痛がる様子もないので夜まで続けた。立ち上がることもできなくなり、深夜に病院に運ばれたが還らぬ人となった。
月曜日。被疑者死亡のまま送検され、無事、目標検挙率は達成された。今日は我が署にとって偉大な日である。

✳︎推理モノ縛りのショートショートで不採用
推理小説における「ハードボイルド」を狙って書こうと思って、そのうえで取り調べの自白という問題を追及するものにしようと焦点を絞った。
犯人がどのように犯行に及んだのかを推理することが基本だが、最初から推理を放棄しているので推理モノではないと言われたらそれまでだが…笑
念頭に置いたのは「共謀罪」
最近の選挙で自民党は負けたけど、まだこの法律の問題点を理解している人が少ないと思っていたので自分としては意味のある話だと思っている。共謀罪には続きがあって、拷問を合憲化している自民党の改憲草案が国民投票にかけられ可決された時さらに凶悪化する。どうも最近の社会の流れを見ているとカウンターインテリジェンスというものが試されているように思えてならない。
#小説 #ショートショート

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