踊り場の会談
学校の怪談の踊り場で、彼女たちはたむろしている。所謂スクールカースト上位の彼女たちは、皆うつくしく、あるいはクローンのようにそっくりなうつくしさだ。
所謂スクールカーストの最下位あたりの誰かが、言った。
「あそこなんて人魚姫のあつまる入り江みたいなもんだよ。きれいで僕らに似てるけど、中身は僕らとぜんぜんちがう。頭がからっぽか、きれいになることしか関心がないか、あるいは王子様みたいな男にしか興味が無いんだよ」
ある意味、正解だった。偏見にまみれすぎてはいる。だから不正解でもあった。
彼女らは、学校の踊り場がダンスホールであるかのように、動画を撮るために踊ったりする。歌ったりする。
ときには、それらに知性を見いださない連中に、好き勝手なことを言われるものだ。彼女らにしてみれば、それこそ時代遅れの役立たずの化石みたいな連中で、自分たちが相手にする価値のないものだったが。
だから、これは、セイレンと船乗りたちの関係によく似ている。
セイレンは歌う。歌声に神経質になる船乗りたちは、これを聞くと不吉だといってすぐに航路を変えてしまう。
セイレンと船乗りは、特に船乗りの側が、交わろうとはしない。身の破滅、惨めな思いをすると、わかっているから。
セイレンは、好きに歌いつづける。
学校の怪談で。
END.
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