14年ぶりのあの子
あの子は同窓会に来なかった。
当時、私たちはほとんどいつも一緒だった。
校内では。学校という特殊な環境はしばしば家庭環境がまったく異なる友人をもたらす。貧乏な子、金持ちの子、とかが友人になれたり関係をもったりする。
彼女は親友だったと思うけれど、あくまで、学校という箱庭においての親友だったなぁ、なんて成人して随分と経つ今では思う。外で遊んだことなんて数えるほどだし、どっちかが好きなブランドのショップとか、好きなアイドルのグッズ売り場なんかに、どっちかが付き合うかたちが多くて、今思えばそれは友人たちの遊びではなかった。
卒業すると、私と彼女は疎遠になった。当たり前の行動のように。
同窓会は、でも来るだろうと勝手に決めつていた。確か、家が近所だったはずの子にそれとなく話題をふった。
「ハルカちゃん、どうして今日は来られなかったん?」
「あー」
さほど親しくなかったクラスメイト。それでも彼女は、同情と、あと少し小馬鹿にしたようなニュアンスの複雑な半笑いを浮かべた。
「お金ないんじゃない? 親の介護で会社やめててさ、おまけにシングルマザーじゃん。あ、知らなかった? なんか今は生活保護らしいよ。ウチの団地のアパートからほとんど出てこないらしいけど。母さんも最近ぜんぜん見ないっつってた」
「へぇ、そうなんだ」
冷静に相槌を打つ。けれど、心臓が冷水に晒されて指先の神経はピクピクとした。まっっったく知らない、初耳だ。想像すらしてなかった。
ふと、急激に、彼女との思い出が泡にすり変わる気配。彼女は知らない人になった。ちがう人になった。私とはもうぜんぜん違う、接点のない、遠い人になった。私の学校での友達。その姿が人魚姫が泡に変わるかのようにぶくぶくと虚像の泡につつまれて、あとには、同窓会が終わるころには、なんにも無くなった。
夜の町にひとり、帰路につきながら、私は胸に空いた穴をただ恋しがった。人生って、ああ、情け容赦がなくてジェットコースターで、なんて、無情だろう。
今さら、友人が友人ではなかった事実が、私の胸をわびしくさせた。
でも、すべて手遅れなんだろう。人魚姫がもう泡になったあとの話、みたいに。
END.
(エヴァの映画を観るのにドキドキしてます!!)
読んでいただきありがとうございます。練習の励みにしてます。