ちょっと疲れたので不死者をば

神様はちょいとばかりお疲れでした。人は言いました。にんげんは、神様のお姿に似せて造られてある、だからにんげんはとくべつなんだ、など、言いました。

高慢ちきな勘違いが何百年と続く、これを眺めるのが正直うっとうしかった。神様は。だからでしょうか、あるとき、神様は自分に本当に似ているものを辺鄙な田舎道のあぜ道に転がしました。

そこでは、浮浪者が野垂れ死にしてました。ですがそれでいいのです。神様は、人魚姫に不老不死の魔法をかけてあげるよう、その死体に親切な魔法をかけてあげました。死体は神様とおなじ、不老不死になりました。

神様と同じ、高度な知性を獲得しました。ところが体は死体でしかも浮浪者でしたから、死体はうまく話すだけの言葉とくちびると歯がありませんでした。うが、ゔが、ゔがぁぁぁぁ、通行人に助けを求めてこうしてゾンビ伝説は誕生しました。死体に噛まれるとゾンビが増えました。死体の体液を浴びるとゾンビになりました。

神様の魔法は強力無比。つぎつぎにゾンビ誕生。地上は大混乱に陥り、混乱のさなかで本当に高度な知性をもっている最初のゾンビがまぎれて見分けがつかなくなりました。人類史上最大の紛失でした。

が、神様のほかはそれを知りません。不完全な不老不死にあふれる地上を見ながら、そろそろかなぁ、なんて神様は思います。

そろそろ、地上を一掃して、なにかべつの生命に星を託してみるのです。それはそうとまずはゾンビVS人間の行く末です、が。

神様は、自分にちょっとだけ似ている兄弟たちの殺し合いをおおいに楽しみました。すこし疲れた、そんな体にはちょうどよい、悲劇と喜劇をいっしょくたにした娯楽でした、からね。どちらが勝つかは、興味はありませんでしたが。

本当に神様に似せて造った不老不死は、ゾンビにまぎれてなおも生きているはず。それは、神様を面白がらせるスパイスでした。


END.

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