ゴミと蟲とマーメイド

ゴミかとおもえば蟲だ。取り除けようと指を伸ばしたらゴミがしゅっと消えた。コバエだった。

季節がら、毎朝、毎夕、毎夜ごとにまちがえる。ゴミ、蟲、ゴミ、蟲、ゴミ、蟲。

うまくいけば蟲でも初動で潰せる。ラッキーな1日だ、なんて、朝ならば占いしたように思う。蟲で汚れた指を洗い流す。

蟲。蟲はいくらでも残機がある。ゲームの雑魚敵みたいに湧いて出てくる。殺虫剤をもちいても蟲は殲滅しきれなくて、彼らは不老不死なんだろうか、とまで思う。蟲。ゴミなのに、マーメイドのしなやかさで人智に分け入ってくるなんて、狂った生命体である。

やっぱり蟲はゴミだな。頭の片隅に、マーメイドの如き美しさと蟲の醜さが連結されてしまうから。人間の頭って器用でそんな連携はすぐにできてしまうから。蟲が悪い。蟲が、次から次に湧いてわいて、尽きることがないから。

ドラッグストアに寄るたびに、私は進化した高性能の殺虫剤を探す。いつかの近未来には、宇宙人などがでてきて彼らの寿命を終わらせる、あたらしい殺虫剤なんて発売されるのかな、なんて夢想する。

この頃は蟲が進化している気がする。殺虫剤が効きづらい。だから新しい殺虫剤。だからどんどん新しいものが入用になる。

蟲。ゴミ。不老不死の円環にぶしつけに殺虫スプレーを吹きかけて。寿命の代わりにうじゃうじゃ多産しまくって不老不死の生命体さながら持久する蟲たちを今日も、朝も夕方も夜も、処理して寝てまた翌日もおなじサイクルを。

そんな憂鬱な、めんどうくさい季節が、今年もやってきた。


END.

読んでいただきありがとうございます。練習の励みにしてます。