私は誰より美しいけど

私は誰より美しいけど、誰より、つまるところ人間の範疇に限っての話になってしまう。ダレであるかぎり、相手は人間だ。

人外がこのごろ増えてきて、人外婚姻が増えてきて、これまで、上流社会の人々は美しい者同士で婚姻するから、美しい者は自然と金持ちであり、上流であり、上等だった。

しかし、人外婚をするやつら、いや人外たちはこぞって下流、それも最下層の人間たちを選り好む。苦痛も醜さもみっともなさも、人間特有のアジがあるから、彼らがもっともそれを強く持つから、とか、なんとか。

まったく。
まっっっっっっっったく。

ルール違反もいいところ。
反則のなかの反則、みっともない!

どこまで醜く生きようとするのやら。バケモノなんざに、囲われて。人間以下になるくせに、しかし人外は、人外たちは、人間ではないから……。

私は、誰より美しいと持て囃される。そうして産まれて生きてきた。幼児のころから美少女モデルだ。

それなのに、仕事すら、このところ人外がニンゲンに化けただけの紛い物が奪ってゆく。

なにが今最大級の話題だ、ヒトを超えた美しさだ、単なるズルじゃないか。人間ではないんだから。化けてるだけのくせして。

ある日、モデルの仕事で遭遇しただけの、中性の女男の人外が、私を見るなり、

「カガミとやらを見たらどうだ? おぬし」

など、抜かしやがる。
殺意しかもてない。

美しさが、憎い。


END.

読んでいただきありがとうございます。練習の励みにしてます。