この恋バカにされてました?
「人魚姫ちゃん」
いつからか、先輩はハルカをそう呼ぶ。やだなぁ、それ、脈がないじゃん。(だって『人魚姫』は、想い人に思いが通じないうえに自分が死ぬハメになる可哀想な話だ)思えば、コレがとどめになって、ハルカはすっかり先輩を諦めてしまってやけくそになった。
春の一歩手前。例年より早巻きになった早咲きの桜がピンク色の吹雪を散らした。青空とのコントラストは少年少女の笑い声にベストマッチ。わたしも卒業式には晴れて欲しいなぁ、ハルカは青空に気持ちを引きずられた。
諦めていること、青空がきれいだから、桜がピンク色になっているから。
他愛もなく興奮したハルカは、卒業式が終わってそれぞれのグループに分かれて和気あいあいとする3年生、いや元3年生の輪にずんずんと乗り込んで、先輩の前にきた。
先輩はこんなに格好いいのにハルカより背が小さい。でも男らしいひと。ひとの魅力って結局はそのひとの言動にあるものだ。
「人魚姫ちゃん。……いいよ」
「はい?」
「うん。いいよ? 付き合おうか。卒業したらもう会えなくなるしな」
「先輩はなにをいって……。え? わたし、人魚姫ですよ? 人魚姫って先輩が言うんじゃないですか。恋なんて叶わなくて当然じゃありませんか」
「今は、桜の花の君、かな。儚くて消えそうだから、人魚姫ちゃんは。あれ? いつも褒めてるつもりだったんだけど、もしや通じてない?」
「毎日ぼくに恋する後輩は死ぬッて言われてンのかと思ってましたよ!?!?」
顔面を真っ赤にピーッとふかしてハルカが逆上した。そんな。今までの苦い初恋の味、なんだったんだ!!
が、まぁ、こうして先輩とのお付き合いはスタートした。
結果よければすべてヨシだろ、とは、先輩の言い分である。ハルカには正直、イケメン流のあらてのイヤミに聞こえた。
END.
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