メロンソーダの値段
あちらでは20円高くて、こちらでは20円安い。消費税も変わる。税込み表示のお値段が本当の支払額であるから、そこもチェックしなければ。
さらに、外で食べる? なかで食べる? 選択肢によってお値段は変わる。
難しい世界ね、百年おきくらいに地上にでることにしているある不老不死の怪物は、久々の地上に対してそう感想を抱いた。発展しているはずなのに、面倒くさくなっているみたい、それに、笑顔も笑い声も減っているみたい。難しい場所ね、この地上世界は。
出歩いてみて、戻るのも面倒なので20円高いほうでメロンソーダパフェを購入した。
「店内で召し上がりですね」
頷く。数円ほど、さらに高くなった。
不老不死の怪物、ちいさなマーメイドは、まだ若いほうだ。他のマーメイドに比べたら。それでも、マーメイドは、この世界もそろそろ終わるのかしらなんて憐れみを抱く。メロンソーダのパフェを食べながら。
来年も来ようかな。食べ納めになるまえに。足繁く通おうかな。食べられるうちに。ここが、まだ、戦場にならないうちに。
マーメイドは、今のここの食文化だけは、気に入っていた。舌触りがよい。生臭さをとっていくこの食べ方、きもちがよい。
食文化だけは、なんとか海に持ち帰れないものかしら。お値段はいくら払ってもいいから……ああ、そうだわね。
スプーンをぺろりと舐めて、旧世代の吸血鬼を思い出した。
あいつらに、食わせればイイんだわ。とっておきのシェフを。
それで、わたしたちに食べさせるため、働くの。ずっと。永遠に。不老不死になれると言えば、まぁたぶん、話は首尾よく進むはずである。
怪物は、上機嫌に、パフェからメロンソーダのゼリィを抜き取った。
こうして、抜き取り、集める。
そうしてできるのが、深海世界である。
END.
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