セイレーン可愛ゆき断末魔
バケモノにも理屈はあるし理性はあるし常識はあるし感情はあるし親子愛すらある。
ただし人間のルールなど通用しない。
そも、人間のルールなどバケモノたちは知らないし、同様に人間もバケモノたちのルールを知らない。人間が虫の気持ちがわからない、虫なんて感情がないんだろ、そんなふうに思うくらいにバケモノからしたら人間とはエイリアンみたいな種であった。
なにせ、動物のくせに動物からアレらだけ離れてまったく違う生態をしている。
おお、おお、こわいこわい。
人間は、こわいこわい!
ただし。そんな化け物たちは、人間が動物ばなれしていくに従って人間たちの前から姿を隠したけれど。けれど、セイレーンだけは、上半身がだんだんと自分に似てくる人間たちに恋したように執着しはじめた。
だって、私達と似てる。
なんだか、あたしらの仲間なの。
ふらふら、食虫の花に蝕まれていく、セイレーンたち。化け物仲間が心配した頃には手遅れで、セイレーンは早くも人間たちに近づいて話しかけたり歌いかけたりした。
しかし、そこはセイレーンの棲家である、海上でのことだ。
セイレーンは、上半身は人間によく似ていて、しかし下半身は紛れもなく魚のソレであった。
容赦なく、セイレーンたちに銛が打ち込まれ、ナイフが切り入れられた。漁師たちはひとまず食べてみて、なかには罪悪感を覚えた者もいた。罪を思う者もいた。いつしか、セイレーンの名は消えて、
人魚姫
と、名が変えられた。
人魚姫を食べれば不老不死の体が手に入る。物騒なうわさと、ともに。
セイレーンこと人魚姫は殺してよきモノ、殺して当たり前のモノとなった。現代に至るまで。
化け物仲間たちが、同情するとともに、いまだに人間たちの前には絶対に決して意地でもすがたを現さない、理由である。
アイツらは何考えてるかサッパリだ、宇宙からでもヤッてきたんか? 異常すぎる! 侵略者ども! もうこの星から避難しなくちゃなんねぇや!
で、ある。
災難である。
END.
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