web検索からパーソナルジムに申し込むまでのリアルなカスタマージャーニー
サイト運営やwebマーケを担当する方々が、集客施策を設計するときに行うであろう「ペルソナ設定」と「カスタマージャーニーの作成」。しかし、やたら自社に関心のある”都合の良すぎる”ペルソナを設定してしまったり、きれいすぎるカスタマージャーニーを作ってしまって、想定どおりの流れで見込み顧客を獲得することができない…そんな経験は誰しもあるのではないでしょうか。
そんなときは、特定の顧客1人の購買プロセスを徹底的に洗い出せるとぐっと解像度が上がるはずです。
そこで、私自身が最近契約した「パーソナルジム」に焦点を当てて、どのようにwebで探し、サイトの広告・LP・記事を読み、意思決定を行ったかを振り返ってみようと思います。特に、ジムのwebマーケ施策を担当する方の参考になればとても嬉しいです!
私は何者で、なぜジムを検討しはじめたのか?(N1のプロフィール)
私は、マーケ関連のSaaS企業でCS(カスタマーサクセス)をしている都内在住の26歳女性です。
学生時代は帰宅部で、体力測定の上体起こしでは15回位で音を上げる自他共認める運動オンチです。社会人になってからも運動といえば出社の往復くらいで、特にコロナ以降は出社頻度が週1~2回程度になったので、平日の運動はコンビニに行く程度になっていました‥。
もともと自分の体型に自信がなかったため、いつも買い物では、かわいい!!と思えるお腹周りや二の腕が細身は買えず、無難なものばかりを購入しています。当然買い物が楽しくなかったので、自分が気に入ったかわいい服を着たいという目的のため、パーソナルジムを探し始めました。
今回契約したのは、都内7店舗ほどを有するパーソナルジムです。芸能人が通っている実績があり、質の良いアドバイスを、他店と同水準の価格で受けられそうと感じたため、そのジムに決めました。
また、無料トレーニング体験でトレーナーがめちゃくちゃ真剣に話してくれたので、ここでうまく行かなかったらもうダイエットは成功できないだろうと思ったのも決め手でした。
今回のジムで支払った金額は、19万円(契約期間2ヶ月半、週1ペース)です。今思うと、後半は惰性だったので解約しても良かったと思いますが、運動する楽しさを知ることができたので満足しています。
全く合理性のない、リアルなカスタマージャーニー
自分がジムに契約するまでのインサイトの変化と行動、そして接触したwebコンテンツをまとめてみました。
課題を認識してから契約に至るまでには体感3ヶ月程かかりました。
web上のコンテンツによってきれいにナーチャリングされたというよりは、「夏服を買う」「季節の変わり目で心機一転したかった」などの突発的な要因に基づき、検索を始めています。(太枠箇所)
また、ジムの選び方もよくわからない状態だったので、「ジムに行くのもありなのかな…」とぼんやりと思い始めたタイミングでの検索では、各ジムの良し悪しを判断することができず、絞り込みを断念しました。(「初回検索」としている箇所)
その後、数週間の期間をあけて、本気でジムと契約しようと思い立ったタイミングで無料トライアル・無料カウンセリング(CV)に至りました。(「再訪検索」としている箇所)
矢印は、インサイトと行動の繋がりを示しています。情報収集段階フェーズ(ジムの比較)になると、複数のサイトをどんどん検索するので、ぐちゃぐちゃになっています。
きれいにカスタマージャーニーを遷移するなんてことは、現実的にはありません。
そもそもダイエット自体(運動自体)に心理的ハードルがあるので、探し始めるまで迷うことも多く、いざジムを探し始めようと思っても失敗したくない心理から、1つのコンテンツだけを信じることはなく、慎重に情報を探していました。
なので、特定情報源だけではなく、自社サイト、LP、比較サイト、GoogleMap上の情報など幅広く網羅的に情報を更新し、いざ思い立ったときには検討対象から漏れないように、問い合わせハードルを低くすることが重要だと言えます。
ここから、具体的に各フェーズでどのように情報収集をしたのかを詳しく見ていきます。
◆ 興味・関心フェーズ〜ダイエットに興味を持ちはじめる〜
ダイエットしたいと考えるようになった最初のきっかけは、「アパレルショップでかわいい服を見つけたが、(自分の体型では)着れないと判断した」ことです。
webコンテンツの作成者側の立場に立つと、課題を認識させるためのコンテンツやセミナーを作れないかと考えることもありますが、当時を振り返ると、元々自分が持っている劣等感や知り合いからの励ましのアドバイスなどがなければ、ダイエットに興味を持つことはなかったと思います。
私は積極的に自ら情報収集をする方ではないので、自分の実体験や信頼できる知り合いのアドバイス(一次情報)でしか課題意識が醸成されないのかもしれません。このような保守的なタイプの人間をコンテンツでコントロールするのは難易度が高いと思います。
◆ 情報収集フェーズ・訪問対象選定フェーズ 〜ジムを探し始める〜
ダイエットしてみようかなとぼんやりと考え始めたものの、後回しになっていましたが季節の変わり目にマンネリ化した生活を切り替えるため、パーソナルジムを探し始めようと思い立ち、具体的に検索を始めました。
ダイエットの手段として、会員制スポーツジムに通う方法などもあると思うのですが、知り合いからパーソナルジムで成果が出たという話を聞いていたことと、絶対に自分一人で運動を習慣化することはできないと確信していたため、思い切ってパーソナルジムを検討し始めることにしました。
行動① 「◯◯(地域名) ジム」で検索を始める
申し込むジムを探し始めたとき、私はまず検索をしました。特に指名で検索するようなジムも知らなかったので、「地名+ジム」で検索しました。検索結果1ページ目しか見ていないので、2ページ目以降にあるコンテンツは見ていません。
検索結果1ページ目では、次の画像のような視点で見ていました。
具体的には、検索結果の1ページ目にあるローカルパック(地図)、比較記事、リスティング広告の順番で閲覧をしました。
ローカルパック(Googlemap)
ジムは通える立地かどうかがめちゃくちゃ重要です。まずは自宅から通える近隣のジムがいくつあり、どのようなジムがあるのかを調べました。この段階では、口コミを詳しく見ることはなく、場所・星の数を参考に、候補となるジムを選定したいと思っていましたが、名前を知っている大手のジムを見つける事はできませんでした。
比較サイト・記事
ジムの選び方がわからなかったので、自宅近辺にどのようなジムがあるのかをとりあえず手早く網羅性のある情報を手に入れたいと思い、各企業サイトに行く前に優先的に閲覧していました。
比較記事で「◯◯に定評がある」といったポジティブな情報を頼りに各企業サイトの方も見に行っていました。
リスティング広告
まだぼんやりとした課題感の時にはあえてリスティング広告のLPはクリックしませんでしたが、ジムを申し込む前提で検索していたときには、一定広告予算をかけている=会社規模もそれなりにあるのではないかという偏見から、リスティングの上位サイトをクリックして、比較検討をしていました。
LPの内容を見て、良さそうなジムは、再度Googleで検索して企業サイトや口コミも閲覧しました。(LPではきれいな謳い文句が多く、怪しかったので念の為調べました)
特に閲覧をしたリスティング広告は、「◯◯円から〜(安さ訴求)」「◯◯駅から徒歩◯分(近さ)」という訴求のある広告文のものでした。ジムの選び方がわからなかったので、金額や近さといったわかりやすいポイントがあると、そのジムを選ぶ理由になりました。
行動② 各ジムのサイトで情報を確かめる
比較記事やリスティング広告などで候補となるジムをざっくり4-5社選定できたタイミングで、各ジムのサイトを見ました。
ジムを初めて認知したコンテンツが比較記事やリスティングのLPだったとしても、やはり最新の情報は自社サイトに集約されていると思ったためです。(比較記事の情報が古くて閉店してることもありました)
特に、検討時には以下のようなコンテンツを閲覧しました。
特徴(強み):ガチ運動向け?ダイエット向け?何が強みなんだろう?
メニュー/コース内容:内容・概算金額はどれくらいだろう?自分が場違いな場所ではない?
ジムの写真:個室?共有スペース?清潔感は?真剣?楽しく和気あいあい?雰囲気は?
コーチや店長のプロフィール:親しみやすいかんじ?ストイックな感じ?(プロのサービスを受けたい)
メディア実績:有名なジムなのかな?
店舗:個人でやってる?大手?エリア的にターゲットは高単価層か?
アクセス:最寄り駅か近隣の駅から徒歩10分以内で通える店舗か?
営業時間:土日の午前中で通いたいが、平日の深夜に行きたいと思っても通える店舗か?
CTA(無料カウンセリング・初回無料トレーニング体験)
あとは、「累計◯◯人が利用」とか「リピート率◯%」などの実績の情報から、信頼できるジムか(怪しくないか)を判断しました。
また、サイトだけでなくリスティング広告のLPでもサービス内容をキャッチアップしたいと思っていました。まんまと無料トライアルにCVしてしまった良いLPの一例として、チキンジムさんのLPで特に目に入ったポイントを書いてみました。(勝手にコメントしてごめんなさい)
私は、色々なサイトを見る中で「自分にとってちょうどいいジム(高すぎずストイックすぎないジム」を探していました。特にサイトやLP内の女性モデル/体験者の写真がめちゃくちゃ重要で、場違いになりづらい入りやすいジム(環境)かどうかの判断材料としていました。
行動③ 無料トレーニング体験(カウンセリング)に申し込む
ここまでで、自宅の近隣にあり、そこそこな金額で、評判の良いジムを3つ絞ることができました。
あとは、無料トレーニング体験に申し込み、ジムの雰囲気やトレーナーの人柄をみて、「ここで頑張れそう」と思える環境を見極めようと思いました。
多くのジムがフリーテキストで候補日を入力する方法だったのですが、カレンダーを確認するのが非常に面倒で、あるジムは日程調整に時間がかかり今回の検討対象から外してしまいました。顧客体験が悪すぎて離脱の要因になりますし、直接やりとりするトレーナーさんも大変だと思うので、日程調整ツールを入れてほしいのですが、導入が難しい理由が何かあるのでしょうか・・?
日程調整ツールの例:TimeRex
◆ 最終検討フェーズ 〜ジムを選定し契約する〜
結局、1店舗は日程調整の都合がつかず、2店舗のジムの無料体験を受けることにしました。特に、無料体験で確認をしたかったのは、以下のポイントです。
居心地の良い空間か(例:アスリート向けのジムで、場違いにならないか)
トレーナーさんとの相性は良いか
2店舗とも、清潔感のあるジムでトレーナーさんが丁寧に教えてくださったので、サービスの提供価値としての差はあまりありませんでした。ですが、最終的に契約を決めたジムの方が、トレーナーさんが笑わずに真剣にヒアリング・案内してくださったので、せっかく頑張るならここでやってみようと思えました。
(あと、すごいしょうもない理由なんですが、トレーナーさんの見た目がゴーリキーみたいに筋肉がごついのにイケボだったっていうギャップが面白すぎたのも決め手でした。。)
最後に
振り返ると、ジムの申し込みをするまで「お金を払っても結局痩せられないダサい自分」が脳裏に浮かんでおり、ジム選びに失敗しないようじっくり慎重に、情報収集・比較検討をしていました。だからこそ、検索結果の情報や記事を読みながら、無意識にCVする理由(地理的条件、やすさ、特長)を探し、申し込む理由(ジムの雰囲気やトレーナーの印象)を求めていたように思えます。
もし私がジムのwebマーケを担当することができるなら
いざジムを探そうと思い立った時に検討対象として見つけてもらうために、広告やGoogleMapなど複数の情報源を網羅的にカバーすること。
通ってみようと思ってもらうために、(最悪こじつけでもいいので)ジムの特長を訴求するサイトとLPを用意し、「着替えがない」「日程全然空いてない」といった 申込みまでのネックをできるだけ払拭すること。
この2つを意識して実施していきたいです。(当たり前すぎますね)
webマーケの施策を考えていると、広告でどうCVを取るか、SEOで順位を上げるには…というように、視野狭窄になりがちです。実際にはいろんな施策が複雑に絡み合ってCVに至る、総合格闘技のような取り組みだと思います。
このnoteでまとめたのは私個人の購買プロセスですが、顧客の数だけ違うプロセスがあります。これらをまとめて平均的なペルソナ、カスタマージャーニーを描いたとて、それは机上の空論に過ぎません。
企業が作ったコンテンツだけで人の意思決定を変えられるなんていうのは幻想であり、私達webマーケターにできるのは、情報を求めるものに最適な情報を用意しておくことだけです。膨大なコンテンツを作っても、1人の顧客体験の中で触れられるのは一部に過ぎないので、失敗や施策の無駄撃ちが多くて当たり前なのです。