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8話:茅ケ崎海岸の烏帽子岩 眺望散歩


「日本の旅と風景印の物語」をテーマに、日本各地の旅紀行を綴っていきたいと思っています。
8話目は、今週のお話になります。どうぞお読みください。



ちょっと待って!
出掛ける前に、切手の話を聞いていただきたい。
切手と風景印は、切っても切れない縁でつながっているので。

多くのかたが知る通り、今年の10月1日から郵便料金が値上げになる。
諸々が高騰する事情を鑑みれば、やむなしと言わざるを得ない。
その中でひとつだけ、どうしても納得できず許せない点がある。
それは、ハガキの料金つまり最低郵便料金を85円に値上げすることだ。
そのため現行のハガキ料金64円切手のみならず、封書料金84円切手までもが追加の切手を1円貼らねばならないという、こすっからい値上げ幅。
せめてあと1円安くしてくれれば、84円額面の切手は単独で使えたのに‥‥。

多くのかたが事務的に切手を使用する際には、気にも留めないことだけれど、大事なポストカードを出す人や、風景印をあつめる我々のような者は、その時使用する切手に大いにこだわるものだ。

旅した季節や場所、名物などが盛り込まれた切手があると、その地の風景印も引き立って、なおさら喜ばしい宝ものとなる。

四季折々で、ご当地色のつよい記念切手たち


ほんの一例として‥‥

切手と風景印のコラボ
こんなふうにギリギリを攻めて上手に押してもらえると
切手も風景印も見事な芸術になる


ちなみに「風景印」をコレクション帳に押してもらう時には、最低郵便料金つまりハガキと同額の64円切手でOKだ。
(そもそも風景印は消印なので、はがきや封書そのものにも押して投函できる)

ところがここに、追加の料金分の切手を貼るとなると‥‥
美しい記念切手などは、その美観を損なわれ、季節感も風情も失われる。

左:神宮外苑の銀杏並木+雪山のサル   右:秩父羊山公園の芝桜と武甲山+前島密のオッサン


くりかえしますが、10月からは85円でこれですよ??

郵政の父・前島密様には感謝こそしていますが、  お願い1円マケてください!



以上のような悩みを抱えつつ、今日は神奈川県茅ケ崎市にある茅ヶ崎海岸郵便局を目指した。
ついでに茅ヶ崎海岸にも足を伸ばして、烏帽子岩えぼしいわを眺めながらサザンの歌を口ずさみ、おにぎりでも食べて帰って来ようという計画だ。

普段ならば徒歩圏なのだが、梅雨入りと共に急に気温が上昇して、日中は30℃以上になるため、JR茅ヶ崎駅まではバスに乗ることにした。
オトナの遠足だ。


JR東海道線茅ヶ崎駅の南口に降り立ち、まっすぐ南へ延びる道を歩くと20分ほどで海に出る。この道は昔から「雄三通り」と呼ばれている。
大昔は加山雄三で一色だったこの町だが、いまはサザンオールスターズに染め変えられて賑やかに若返っている。
移住して来る人も増えて、街並みも歩く人も、昔よりこぎれいになった。
わたしが若かった頃のサーファー達は、みんな惨めな格好をしていて「海乞食うみこじき」と冷やかされていたものだ。(笑)

海へ向かう雄三通り



さっそくだが、このあたりで今日の風景印をいただこう。
JR茅ヶ崎駅の南口から、雄三通りを海へ向かって歩いて行くと、右側に2階建てでパール色のきれいなタイルが貼られた建物が見えてくる。
茅ケ崎海岸郵便局だ。

中に入ると、局員さんが4~5人いて全員アロハシャツを着ていた。
(さすが茅ケ崎海岸だ)
グレー地にネイビーブルーの草木柄が入ったアロハを着た、色白の女性局員さんが、カウンターで対応して下さった。

今日のために、とっておきの切手を用意してあったので、それを貼ることにする。絵柄は沖から見た烏帽子岩と富士山で、手前のツツジは茅ケ崎の市花だ。(市花は50年前に市民の投票によって選ばれた)

この風景印デザインはまだ新しく、使用開始から20年しか経っていない
茅ヶ崎海岸のロゴも現代的だ
意匠はサザンビーチから見た烏帽子岩と、カモメたち、
氷室椿庭園(東海岸にある)の椿


切手箱の中で眠っていたこの切手も、出会うべき風景印と出会って喜んでいるのではなかろうか。
そして10月以降はサル(=5円切手)をお供にしなければ使えなくなるのだった。アブないところでセーフだ。今日、来てよかった。


ところで、
茅ケ崎海岸郵便局のナナメ向かいには、ちょっとシャレたお店がある。
「らんぷ亭」というトルコランプのお店で、販売と同時に手作り教室もやっている、小さいけど地元で人気のお店だ。

実は日々樹も近々、友人の新築祝いにランプを作りに行きます

ちょっと覗いたら、今日も近所の人が3人制作に励んでいる最中。
ハズキルーペの高齢男性もひとりおられた。(細っかいのにすごいなあ)

表は湿度も高いうえに日も照って、予想通りの暑さとなっていた。
しかし海岸まではもう15分そこそこ。
そこで茅ケ崎公園野球場の中を通って行く道をとった。

住宅地の民家 砂防の柵がつけられていたり
2023年にサザンオールスターズが夏フェスを開催した野球場


その節は、こんなんなって、東海道線が増便されてました


今日の野球場はひとりとして人影も無く、しーーーーんとしていた。
松林に囲まれて風も通り、ここを歩くのは気持ちいい。アスファルトの道路よりよっぽど良かった。

変わった形の大型オブジェがあって、この中には戦争で亡くなった方々の慰霊碑が納められている。(拝)


さて、いよいよ歩道橋で国道134号線を渡って海岸へ出よう。

歩道橋の上から烏帽子岩が見えてくる


このあたりが、いちばん烏帽子岩に近い場所だ。(桑田佳祐の実家も近い)
ちなみに、うちの92歳じいちゃんも、茅ケ崎生まれの茅ケ崎育ちだ。
なので若い頃は、みんなで烏帽子岩まで泳いでよく渡ったという。
現在では、泳いで行く人はまずいないだろう。釣り船が渡してくれたり、近ごろはSAPでも漕いで渡って行く。
カケラのように小さく感じるが、実際は結構大きい「姥島」という名前の島なのだ。(行ったコトないけど)

                            photo by 早川由紀夫さん


お腹が空いてきたので、そろそろおにぎりを食べよう。
ベンチや石段はそこ此処にあって、座るのに不自由はないのだが、アイツらが後ろから狙っている。

ボーッとしてる奴、見っけたぜ!

こういう事もあろうかと、トンビの襲撃に備えて、今日は日傘を持ってきた。海岸は日陰がなく、めっぽう暑いのでちょうど良い。
安心して腰を下ろしてお茶を飲み、おにぎりを食べ終える頃には、後ろのトンビが4羽に増えてカラスも集まってきていた。
食後にようかんを食べて、最後にお煎餅をつまんでいた時だった。
日傘の中をぶわあぁっっ!と翼が横切って、お煎餅を持っていた指先に
がしっつ!と痛みがはしった。これには驚いた。
かじりかけのお煎餅は砂浜に落っこちて、痛かったけど怪我にはならずに済んだ。トンビは失敗したようだ。
それにしても日傘でガードした地元民に手を出すとは、アイツらも相当空腹だったんだな。


茅ケ崎海岸をしばらく歩いて、サザンオールスターズのおかげで全国的に有名になった烏帽子岩をゆっくり眺める。
滲むこともなく、海は穏やかでいつものように淡く青かった。
こんな大人の遠足も、たまにはいい。


(おしまい)


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