DigiTech DIGIDELAYの修理
DigiTechのDIGIDELAY。
X-SERIESのデジタルディレイがこのDIGIDELAY。
「DigiTechのカスタムDSP "Audio DNA"を搭載したデジタル・コンパクト」っというのがこのシリーズの売りで、搭載のDSPにHarmanって刻印されてました。
そういえばHarmanが親会社だったよなーっと色々調べたら、DigiTech自体違う部門に吸収されて無くなったっぽい…
しかもHarmanは今は親会社サムスン電子なのね。
そういえば、当時聞いた様な、聞かなかった様な。
このペダル、メタル系で有名な人が使ってた様な気がしたんだけど、すっかり忘れました。
症状を確認していきます。
スルー音は出ますが、エフェクト掛からずというか、切り替えが出来てない?
てか、このシリーズはLEDの位置が悪い。上から覗き込まないと確認できない。
スイッチはアクティブなので、スルー音が出るって事は、電源は生きてる。
分解して中身をチェックしていきます。
裏蓋ですが7/64インチの六角レンチで外します。
動画内では7/16ってなってるの間違ってますね。ごめんなさい。
ボリュームノブとジャックのナットを外します。
これで基板が外れました。
早速目についたのが、トランジスタっぽいチップのパーツと0オームの抵抗が焼けて丸焦げになってます。
これが一体何なのか?
回路図を色々探したんですがDIGIDELAYのは無く、同じX-SERIESのDIGIVARBのは見つかりました。
殆ど回路図は一緒なのではないかと思い、こちらを参考に修理を進めます。
焼けたパーツを探したところ、ありました。
U1のNCP304ですね。
これを更に調べて、リセットICという事が判明しました。
リセットICとはなんぞや?って事ですが、実は私もデジタル回路あまり詳しく無いっすw
今調べたところ、このエフェクターだと起動を安定させる為に付いてるみたいですね。
この後散々苦労してるんで、動作の仕組みを理解しました。
焦げたパーツの正体は分かったんですが、どうも怪しい。
実はよく見ると何かが見えるんです。
という事で、フラックスクリーナーで綺麗にしたいと思います。
綺麗にして見たところ、想定外の自体が、回路図のNCP304は端子が4本のはずなんですが、基板に付いてる物は5本あったんです。
長年の経験で私は察知した。
回路図と今回手に入れた本体は中身のバージョンが違う。
動画では言及しなかったんですが、海外のサイトで基板の写真をアップされてる方がいて、今回の焦げた部分を見たところ、4本足のNCP304が付いてました。
なので、DIGIVARBと回路図が違うというよりは、中身のバージョン自体が違うんですね。
全くの余談ですが、製品の回路やパーツを変えるケースというのは色々あって、1つは実は不具合があって修正するパターン。
もう一つは、パーツが廃盤になって同じ構成で生産出来なくなって、やむなくパーツと構成を変えるパターンがあります。
今回はどっちなんでしょうね?
5本の端子がついた謎のリセットIC。
どこの端子が何に繋がってるか調べようと思い、先にこの焦げたリセットICを外す事にしました。
フラックスとハンダを盛って一気に外そうと思ったんですが、なんか変な感じで取れたんで、やばそうだと感じたら、パターンがほぼ全部持ってかれました。
まぁ、焦げた部分はこうなりやすい。
更になんだけど、0オームの抵抗はハンダ部分のパターンは残ってたんだけど、スルーホールになってるパターンの部分が焦げてて、ここで断線してるっぽくて、実質この部分は使えない状態になりました。
この断線があったんで、リセット端子に繋がってるROMとDSPが生きてるかどうか心配になったんです。
パーツ通り越してパターンが焼き切れるって結構なもんだよ。
とりあえず、ROMとDSPが生きてるか確認したいので、3.3VのリセットICを買いました。
元の型番が不明というのもあり、チップの3.3VのリセットICの選択肢がほぼ無く、これしか手に入らなかった。
ミツミのPST9133Nです。
電源、リセット端子、GNDを繋げば動くだろうと甘い考えで始めましたw
このミツミのリセットICはSOT-25-5っていうパッケージで、直接配線する事はほぼ無理なので、変換基板を使います。
専用の変換基板を用意しようかと思ったんですが、トランジスタ用の変換基板がそのまま使えそうだと思い、試しに当ててみたら端子のピッチが一緒なので行けると確信。
トランジスタ用の変換基板を使って取り付け。
2番のSUB端子はGNDとショートさせろと書いてあるので、ここだけ強引にショートさせて、あとはそのまま取り付けていけそう。
という事で、取り付けて、基板に配線をして動くかどうか確認。
全く動きません。
ここで半分諦めかけたんです。
回路図とメモった配線図を見てて、1KΩの抵抗があるはずなのに、なんで0
Ωになってるんだろう?と疑問に思って、とりあえず1Kオームの抵抗をリセット端子との間に入れたんです。
そしたら、5回に1回くらい、電源が点く様になった。
タイミングよく電源が点いた時にエフェクトが掛かってるか確認した所、エフェクトも掛かってました。
希望の光が見えた瞬間ですね。
ROMとDSPが生きてて、直る可能性が見たとと同時に、回路の仕組みを理解した瞬間だった。
メモった配線図にも書いてあるんですが、リセットICの左上の端子に繋がってるC30というコンデンサが何の為に付いてるのか全く判らなかった。
SOT25-5のリセットICをDIGIKEYで片っ端から調べて、ICの足の順番が合致するものを調べたら出てきました。
TIのTLV840というリセットIC。
このリセットICは遅延機能が付いてるんです。
データシートを見ると、左上の端子とGNDの間にコンデンサを入れると遅延が出来るとかいてあります。
まさしくこれ。
使えるリセットICが判明したんですが、このTLV840の3.3Vの物は在庫が無くて手に入らない。製造が終わってるのかもしれない。
まぁ、とにかく手に入らない。
おまけに基板のパターンはNCの端子以外全部剥がれてます。
なので、TLV840を手に入れた所で、そのまま付けられない。
ということで、動けばリセットICは何でもいいって事になります。
問題はどうやって遅延を付けるか?
DIGIVARBの回路図を見てみると判るんですが、C47とR59とR28で遅延させてるんですね。
この回路図は遅延機能が無いリセットICの回路図なんです。
コンデンサと抵抗を取り付ければミツミのリセットICでも動くはず。
コンデンサと抵抗を追加で付けるのは面倒だなーって思ってて、基板をよく見たら、前バージョンの名残でC47とR59の付ける場所が残ってた。
これはラッキー。
R28はおそらく0Ωの抵抗の位置なんだろうけど、パターンが切れてて使えないので、直で付けます。
余分なハンダを先に取って、抵抗とコンデンサを取り付けます。
コンデンサは元々は10uFの電解コンデンサが付いてたはずなんだけど、背の高いコンデンサしか持っておらず(というか廃盤の背の低いコンデンサを使うのが勿体なかったw)丁度良い積層セラミックの10uFがあったので、これを使います。
役割的には、積層セラミックの方がトラブル無さそう。
という事で、取り付け。
1KΩの抵抗はとりあえず空中配線で。
この状態で動作確認。
見事に復活。動いてます。
ここまで来るの長かった。
回路的には直ったんですが、このままじゃケースには収まらないので、まとめます。
変換基板は元々付いてたリセットICの位置に貼り付けます。
変換基板の裏側が通電しそうなので、絶縁出来そうな厚手の両面テープで貼りました。
配線はなるべく短く邪魔にならないようにまとめて。
使った配線材はパターン修正でよく使うかなり細い物。
配線剥くのに細い専用のワイヤーストリッパー持ってなくて毎回困ってたんですが、エンジニアのPAW-01 マルチワイヤーストリッパー使ったらいけました。
このワイヤーストリッパーめちゃくちゃ便利なんだけど、重いんだよな…。
大体、配線って10本20本作業するから重いと疲れるのよ。
今回判ったのは、テーブルに半分置きっぱにして、ピンセットで配線ツマミながら剥けば疲れないんだよ。このやり方はアリかも。
配線して、抵抗も邪魔にならないように取り付け。
取り付け終わったら動作確認と、ケースに入れて動作するかもチェック。これ結構重要。
一通り確認したらフラックスを掃除して、組み立てです。
電池スナップのケーブルが上手くやらないと挟まれるので、ここだけ注意。
やっと修理完了です。
直ったので音のチェックをします。
デジタルディレイの音自体は普通かも。
ただTAPEとMODとREVARSEの音はいいかも。
これはこのDIGIDELAYしか出せない音かもしれない。
気になる方は動画内で音を確認してください。
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