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海に呼ばれた日

実家は海の近くだ。卒業した中学校の校歌の歌いだしは「さわやかに潮風香り」だし、自転車はすぐさびる。そういえば小学校の全校遠足も海のそばの公園だった。26歳の春まで住んでいた。

海はすごく身近な存在なのに、見るとめちゃくちゃテンションがあがる。週末に車で買い物に行くと絶対見るので、いつも車内は大盛り上がりだ。天気が良かったりすると、ついちょっと寄ってしまう。

ご時世で引きこもりなので今年も行けなかったけど、毎年の海水浴も楽しみにしていた。ダイビングにはまってた頃は、毎月潜っていた。

21歳、大学4年生の秋。私は、バイオ系の研究室に所属していた。実験結果が予想していたものと異なり、教授はこの研究テーマを今年度でペンディングにする事を決めていた。まだ研究を始めて半年、このままでは2年後に修士論文が書けないので、別のテーマも並行して進めることになった。

同期より多い実験量、直属の先輩のセクハラ・パワハラ。あとで考えれば、そういうストレスがあったのだ。当時は毎日必死で、始発から終電まで学校にいた。

その日は目が覚めたらお昼をとっくに過ぎていた。細胞の面倒をみなければならなかったので、あわてて家を出た。それで、駅に向かって歩いていたはずなのに、気が付いたら海岸にいた。

ド平日。秋。肌寒い。でも、少しは人がいた。

楽しそうなカップル、ランニングの休憩中みたいな人、犬と散歩してる人。

やってきてはいなくなるその人たちを眺めながら、何時間そこにいただろう。日が暮れ始めた。ぼーっと眺めていたら、山の影が見え始めた。

もしかして…いやもしかしなくても、富士山?

太陽は山のてっぺんに沈んでいった。私は涙を流していた。

あとで知ったけど、ダイヤモンド富士っていうらしい。次の年にまた見れるかなってカメラを持って行ったけど、調べて狙ってた日は天気が悪くて、少し日をずらしたら全然てっぺんじゃなかった。(見出し写真がそれです。)

あの日、なんで海にいったのか全く分からない。スピリチュアルなことは信じないタイプだけど、海に呼ばれたとしか・・・!

素敵な景色を見せてくれた。海とは両想いだと確信した。これからも大好きだよ。

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