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「人生損している」とは一体誰にとっての損なのか
Aさん:「高い所とか速い乗り物が苦手だから、ジェットコースターとか乗らないんだよね。」
Bさん:「えー!それ人生損しているよー!乗ってみたら絶対楽しいはずだから、乗ってみなよ!」
「人生損している」
お金の使い方、時間の使い方、物事の楽しみ方などに関する会話でよく登場する表現ですね。私はこの表現を見聞きするたびに思います。
それは一体誰にとっての損なのかと。
冒頭のジェットコースターの例に戻りましょう。
Aさんは高い所や速い乗り物が苦手なので、ジェットコースターには乗らないと言っています。「他の人は楽しいと思うかもしれないけど、私は楽しめないんです。」恐らくこんな感情でしょう。
一方のBさんは、恐らくジェットコースターを楽しめる側の人間なのでしょう。「こんなに楽しい経験なのに、楽しめないなんて信じられない!」と。
両者の考え方を言語化した時に初めて考え方の違いが判明し、お互い理解できないという状況が発生します。
そして、楽しめる側の人間がついつい「人生損している」という言葉を遣ってしまうに至るのではないでしょうか。
誰にとっての「損」なのか
お金の使い方、時間の使い方、物事の楽しみ方などで有効に使っている側、楽しんでいる側が使ってしまいがちな「人生損している」ですが、なぜそのような言葉を使ってしまうのか。
もしかしたら、「同じ人間なんだから、同じように感じるはず。」という前提がどこかにあるのかもしれません。
自分が楽しいと感じる
↓
自分は人間である
↓
相手も人間である
↓
相手も楽しいと感じる(はずである)
↓
この体験をできないのはもったいない(損である)
しかし残念ながら我々は別の個体であり、遺伝子が違えば生まれや育ちも違う。全く同じ個体でなければ感じ方も完全に同じではないはずです。
「相手も同じはず」という前提が無意識にあることが、「機会損失=損」という思考に繋がるのかもしれません。
また、「損」は「得」の対義語であり、ある基準に対してプラスであれば「得」、マイナスであれば「損」という風な尺度を表す言葉です。この”ある基準”というのはお金の使い方、時間の使い方、物事の楽しみ方は絶対的なものではなく、人によって変わるものです。これを絶対的なものとして捉えてしまうと、「損している」という考えになってしまうのではないでしょうか。
一方、言われた側にはムッとなってしまう人もいると思います。「一緒にしないで欲しい」、「あなたは損と思うかもしれないけど、私はそうは思わない」と。
つまりは「自分と同じはず」という相手の前提(絶対的な基準)に対して不満を抱くのではないでしょうか。
損得の基準は人それぞれ異なります。
自分にとっては「損」でも、誰かにとっては「損ではない」かもしれません。「よそはよそ、うちはうち」ではないですが、自分と他人は違うということをもう少し念頭に置くとわだかまりが少ない人生が送れるかもしれません。
ちなみに私も高い所と早い乗り物は苦手なので、ジェットコースターには乗りません。”ジェットコースターに乗らないこと”は、私の精神の安定に繋がります。つまり私にとっての「得」であるのです。
お互いに歩み寄る
「相手も同じはず」という無意識の前提条件のすれ違いで、「人生損している」という言葉は言われた側に不快な思いをさせるものになりがちです。
ですが、どうにかお互いが歩み寄れないかと考えてみました。
「人生損している」、文脈にもよりますが多くの場合は悪意はないはずで、あなたの人生にもっと選択肢を、バラエティを、豊かさを望み提案しているのではないでしょうか。
言った側は大抵の場合、相手を見下しての発言ではないはずです。「こんなに楽しいんです」、「お得なんです」、「効率的なんです」という思いを伝えたくて、でも手頃な言葉がそれしかなくて、つい口から出てしまう。
もしこれが「私はこんなに楽しかった」、「私は得をしたと思っている」、「効率的で捗った」という主観的な言葉であればどうだったでしょうか。相手は「そうなんだ」となって、ムッとすることは少ないのではないでしょうか。
もちろん相手のことを考えた言葉を遣うように心掛けなくてはいけませんが、言葉を受け取る側もなぜ相手がそのような言葉を選んだのかを少し考えてから反応すると良いかもしれません。
相手はただ純粋に経験から人生の選択肢を提案してくれて、そこに悪意はないと判断できれば「人生損している」という言葉は受け流せるかもしれません。
些細な言葉でお互いに嫌な気持ちをせずに済むと良いですね。