ホームレスからお金を貰った話
ホームレスって、どんな人だと思いますか?
大学に入りたての18歳だった僕は
「なんだか不潔で関わりたくない」
そんなイメージを持っていました。
後にそのイメージが180°変わるとは知らずに。
18歳の頃の僕は、
「イベントスタッフってタダでライブやスポーツの試合見れて楽しそう!」
そんな期待から、初バイトである
イベントスタッフに週4で勤務していた。
バイトにも慣れてきた5月頃、
スタッフの休みの埋め合わせで
急遽大宮NACK5スタジアムに行くことに。
そして、その帰りに事件が起こった。
頑張った自分へのご褒美のカルピスを
買うために自販機にPASMOをかざした。
と、思ったけど飲み物が出てこない。
「もう1回かざしたら出てくるかな?」
と思ってかざした後に
パスモの残金が116円、現金が63円しか無い事実に気が付いた。
しかも、「落とした時に危なそう」と思って
キャッシュカードも無かった。
「じゃあ誰かに頼ればいいじゃん」
と思うかもしれませんが、
当時は友達もいないし両親とも仲が悪かった。
だから、自分で何とかしないといけない。
「え?どうすんのこれ?」
頭が真っ白になりました。
とりあえず、家までの距離を調べてみる。
約25km。
歩く以外に選択肢の無い僕は、
その距離を歩くことに。
ホントは6時間で歩き終わる予定だったのですが、
途中でスマホの充電が切れてしまいました。
「コミュ障だし、知らない人に聞きたくない」
なんて思ったけど、翌日は大学で試験がある。
この試験を落としたら単位はきっと取れない。
そんなことを言っている場合じゃないから、
コンビニの店員に尋ねることにした。
そしたら、僕の方が申し訳なくなるほど心配してくれ、地図を見せながら丁寧に教えてくれました。
「この調子ならスマホ無くても楽勝じゃん!」
そう思った先に第二の地獄がありました。
景色が変わってきたらコンビニで道を聞く。
そんなことを繰り返していると、
東京に着いたあたりから
「警察行った方がいいよ」
「親に連絡した方が良いんじゃない」
と、だんだん対応が厳しくなりました。
しかも、1回や2回ではなく5連続で言われました。
絶対に親に連絡したくない!
警察沙汰になんてしたくない!
そう考えた僕はコンビニではなく、
路上の人に尋ねることにした。
でも、何度話しかけても無視ばかり。
刻々と迫り来る試験、不安が募っていった。
心が折れそうになる中、
ペットボトルや缶類をプラスチックの袋に分けて運んでいる人が。
近くに行ってみると、50,60代前半の、整えられていない身なりの男性でした。
普段なら、絶対に近づかなかったと思います。
でも、「道さえ教えてくれれば誰でも良い」
そんな気持ちで話しかけると、
「もしかして迷子?」
と聞かれました。
「はい、そうなんです。
実はお金が無くて電車に乗れなくて…」
と話すと、
「じゃあお金あげるよ。これで足りる?」
と言われ、500円玉を渡そうとしてくる。
彼の何日分の給料なんだろう?
彼にとっては大金かもしれない。
そんな考えから断ろうと思ったが、寝ずに10時間歩いた僕にはどうしてもお金が必要だった。
代わりになるかは分からない。
でも、タダで受け取るのは申し訳ないと思った僕は、着けている時計を渡そうとした。
そうしたら、
「要らない。」
と断られてしまいました。
「じゃあ何か代わりの物を渡さなきゃ」
そう考えている僕に、最寄り駅の場所だけ言って去ってしまいました。
きっと、物を貰うためにお金あげた訳じゃない。
人を見た目でしか判断できなかった僕には、到底理解できなかった。
でも、今なら分かる。
自分がどれだけ愚かで、
彼が何にお金を使ったのかを。
貰ったお金で家に帰り、お金を降ろしてすぐに
大学に向かった。
幸い、試験の説明をしている最中の教室に滑り込み、無事に単位が取れた。
単位より何倍も重要なことを学べたこの経験は、
5年以上経った今でも500円玉を見る度に思い出している。