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3時間目 ヒートアイランドや大気汚染に対してどのような対策をとっているのか? ウ

車社会の現状


シカゴの街並み(Vox 2016)

まず初めに、シカゴの街を上空から見てみる。ここで分かるのは、 都市ではほとんどが車のためのスペースであることだ。「車が都市を支配している」といっても過言ではない。実際に都市を歩こうとすると、その多くの時間は信号待ちになるだろう。
これによって都市では大気汚染、騒音、交通事故率、現代人が外へ出ない引きこもりなど、様々な問題を引き起こすと考えられる。
しかし実際問題これが一般常識としてシカゴ住民には普通のこととされている。

バルセロナの現状

バルセロナではこの過度な車社会により、多くの都市問題を抱えていた。2014年、バルセロナでは深刻な大気汚染問題になり、バルセロナと、その周辺35の自治体はEUの大気質目標を満たすことができなかった。

スペインでの自治体別PM10の量

大気質悪化によって早死にする人が多くなった。実際にバルセロナでは毎年3500人が早死にしているといわれている。他にも市内での交通が騒音公害を引き起こしている。

そのためにバルセロナ自治体は、交通量21%削減を目標とし、大規模な都市交通計画を制定した。その計画の名前は「スーパーブロック」である。

スーパーブロック

バルセロナでは、歩行者や自転車利用者に優しい都市をつくるために、スーパーブロックという構想を実行した。これは、市街地中心部における交通量を最小限に抑えることを目的とした都市設計コンセプトである。
計画の内容は非常にシンプルで、まずある一定の範囲を定め、その範囲に車を入れないようにするということだ。これにより道路は歩行者天国となる。ただそれではブロック内での物流などが不便になるため、ブロック内での一方通行かつ時速10kmでの走行は許可されている。(ブロック内に店や住居がない区間では、全く車を通せなくしているところもある。)他にもこれまで地上にあった駐車場も、全て地下に設置し、歩行者スペースを拡張させている。

スーパーブロック図解

これにより、市場、屋外ゲーム、イベントのための街路スペースが確保されることになる。このブロック内では常に車に対する警戒をする必要がなくなり、 歩き回ったり、交流したりできる快適な街並みをつくることを目標としている。
他にもこれにより、もともと交差点であるところなどを広場にでき、自然を増やすこともできる。

スーパーブロックの効果

バルセロナ北西の都市、ビトリア・ガスティスでは、2008年からスーパーブロック設計を実施している。 ここではその結果について説明する。
①歩行者スペースの拡充:スーパーブロック内での歩行者スペースは、総面積の45%から74%に増加した。
②騒音レベルの削減:交通量が減り、騒音レベルは66.5dBAから61dBAに低下した。
有害ガス削減:この地域での窒素酸化物(NOx)が42%削減され、粒子汚染が38%削減された。 
③経済活動の活性化:歩行者が増えることでより多くの人が立ち止まって商品を見たり、買ったりすることで、経済が活性化した。

アメリカでのスーパーブロック

ここで考えるのは、アメリカではスーパーブロックを施行することができるのかについてだ。
バルセロナでスーパーブロックが実行しやすいのは、都市化する際に、歩行者を主体に考えていたという背景があるからだ。バルセロナの都市化は1850年代に行われ、その頃自動車というものはなく、都市は主に歩行者を中心として作られていた。
またバルセロナの街並みはグリッド状であり、ブロック単位で行いやすいのも理由の1つだ。

バルセロナの街並み 


シカゴの街並み google earthより


だがスーパーブロックはどの都市でも使える構想とされている。そのため、ニューヨークでももちろん行われている。
しかしニューヨークでこの政策が行われているのは裕福な、たくさんのビジネスが立ち並ぶ、商業地区などになっている。これにより、スーパーブロックの恩恵を受ける人はバルセロナと比べて限られるのが問題である。

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