チガサキ⊿ライフ043 : 事故 (転倒)
1. 地下道
勾配のきつい地下道の下り坂の終わりに、海岸から吹き込んだ砂が溜まっていた。慌てて自転車を止め、後ろを振り向き「ブレーキ!」と声をかけた。しかし、実際には言葉にならず、「ああっ」とうめき音が漏れたのみであった。慌てて振り向いた目に飛び込んできたのは、猛スピードで坂道を下り、その勢いで激しく転倒する娘の姿だった。
2. 水族館
走行記録更新に意気込む娘と、片道7Kmの江ノ島水族館へのサイクリングに挑戦した。自転車の空気も入れて、準備万端で9時30分に出発した。コンビニでの買い物や、2つの公園で遊んだ後、12時前には江ノ島水族館に見事到着した。意気揚々とする娘とは対照的に、座っているだけの息子がぐずって、見慣れた水族館なのに、大きな水槽が怖いと訳の分からない事を言って抱っこをさせられた。「もうおうちに帰りたい。」と情けない息子をあやしながらも、鵠沼の公園や砂浜で遊びながら家路を辿った。江ノ島がどんどん背中で小さくなるのを確認しながら、地下道の坂道も何度も通った。自信が付いた娘の坂道を下る速度はだんだん速くなり、慣れた時が一番危険な定石通り、最後の地下道で事故が起こった。
3. 負傷
タイヤの滑り初めから、転倒の終始をじっと見つめていた、何もできずに…。不幸中の幸いで、強く衝撃を受けたのは、歪んだハンドルと前カゴだけで、手をついた両腕と下になった左足は擦傷のようだった。大泣きする娘に腕や肩が動くか確認すると、やはり大きな怪我は無かった。周りの人が振り返るぐらい大泣きし続けながらも、ペダルは漕ぎ続け、残り3kmの道を完走した。傷口の水洗いと消毒の必要性を説いたのだが、「しみるから嫌だ!」と泣きながら頑なに抵抗していた。ごねる娘を説得し、娘が自分でする条件で合意し、なんとか水洗いとマキロンでの消毒をした。傷口がしみるのがよっぽど怖かったのであろう、大げさに伴奏子を5つも貼った後は、すっかり落ち着いていた。「お風呂には、両手を上げたまま入らないといけない。」と減らず口を叩いて、つい先までの号泣はお首にも出さずに、余裕をすっかり取り戻していた。