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物々交換が映画になった!〜ブランデッドムービーという可能性

2024年12月、子育てカフェeatoco の物々交換をテーマにしたブランデッドムービー『めぐる』が、YouTubeとSNSで公開されました。
こちらのショートムービーは、ひょんなことからeatoco を訪れ、物々交換サービス「ものくる」に参加することになった一組の親子と、とあるお客様との出逢いを通して紡がれる、ハートウォーミングなストーリー。

詳しいストーリーはこちらのリンクからムービーをご覧いただくとして、このnoteでは「ブランデッドムービー」とは何ぞや?という簡単な紹介と、今回eatoco(以下、イイトコ) がブランデッドムービーを作ることになった経緯、そしてブランデッドムービーを作ったことで起きた出来事やそこからの気づきなどを綴っていきます。
▽『めぐる』本編はこちらから↓(約6分半のショートムービーです。隙間時間にちょこっとご覧になれますので、ぜひ!)


ブランデッドムービーって?

ブランデッドムービー(ブランディングムービーとも)とは、企業やブランドの価値を伝えるために作られる動画です。企業やブランドの掲げる理念や、商品・サービスの特徴、イメージする世界観などをストーリー仕立てにすることで、受け手にとってわかりやすく、さらに共感を呼びやすいという強みがあります。動画全盛のこのご時勢に、まさにピッタリの伝達ツールと言えましょう。

ゾンビ映画になるはずだった

さて、そんなブランデッドムービーを、なぜイイトコが作ることになったのか? それには以下のような経緯がありました。

もともと夫の仕事仲間に、映像を得意とするOさんという方がおりまして、その方がクリエイター仲間さんたちと組んでいる「みんなでつくる劇場公開映画」(略して「みんつく」)というチームがあります。

▽みんつく〜みんなでつくる劇場公開映画公式チャンネル

そして夫は、人気のアニメや映画のコンテンツとカフェがコラボした「コラボカフェ」なるものに常々興味を持っておりました。イイトコを舞台に自前のムービーを撮って、そのムービーとコラボしたメニューを出す「コラボカフェ」をやってみたいとの情熱を人知れず温めていたのです。そこで、「みんつくに、イイトコを舞台にした映画をお願いしてみるのどうかなぁ? それで映画に出てきたモチーフを絡めたコラボカフェを実現したい」と言ってきました。

そこへ、

「え? なんですって?!? イイトコを舞台に映画を撮ってもらえるの? それなら迷わずゾンビ映画でしょう!ゾンビ大好き!この関原(のシャッター商店街)がゾンビの巣窟になって、ゾンビが(シャッター)商店街を練り歩いたら最高!わたしもゾンビ役で出たい!」

と、ゾンビ映画を敬愛するわたしが応じまして、「ならば」とOさんに打診。すると、やはりゾンビ映画好きのOさんが快諾。いいですねやりましょう!ということになり、大まかなストーリーはこんな感じで、イイトコとの絡みはこうなって、コラボするカフェメニューはこのあたりで、そしたらそのモチーフをこの辺で登場させて...…と大盛り上がり。撮影時期も秋には!と決まりかけた.....…のですが、それも束の間。なんとゾンビメイクができる人が当座は1人しかいない!しかもその方のスケジュールが押さえられない!となり(そりゃここまでが急な話なので無理からぬこと)、ゾンビ映画はスケジュールを仕切り直して来年のお楽しみに....…となったわけです。

こんなポスターを古道具屋さんでゲットして大喜びのわたし。ゾンビ映画を撮る際には、セットの壁にこれを貼っておくのもメタ的で面白いなと思っている。準備はバッチリ!

イイトコの価値に気づく〜ブランデッドムービー誕生の瞬間〜

さて、「ゾンビ映画がなぜ物々交換映画になったのか?」です。ゾンビメイクのできる方の都合が付かなかった、と先述しましたが、それは裏を返せば「ゾンビメイクさん以外はスケジュールが押さえられた」ということでした。ここまでの、「イイトコのムービーを撮ろう!」と盛り上がった機運を逃す手はありません。そう、そこで、いま集合できるスタッフと演者さんで兎にも角にも作品を一本撮ろうよ、ということになったのです。脚本も、実は用意できていました。今回、『めぐる』の監督を務めることになる(別の)Oさんが、物々交換ものくるの面白さに注目してくださり、早くも脚本を書き下ろしてくださったのです。

物が人の手から手へと巡っていく物々交換にひっかけて、「めぐる」というタイトルが付けられた脚本を読ませていただいて、わたしはその物語に一瞬で引き込まれました。冒頭から面白くて、グングン読み進められる。いつも物腰柔らかで、控えめなOさんの秘めた才能に完全にやられました。

これは絶対に面白い作品になる! それにこれ、イイトコの物々交換で日常的に起きていておかしくない物語だし、誰かの不用品が誰かの必要品になるって、これこそイイトコが物々交換で伝えたかったこと。まさに、イイトコが物々交換に込めたメッセージを具現化していた脚本だったのです。ブランドの理念を伝えるストーリー、ブランデッドムービーが誕生した瞬間でした。ゾンビ映画からの大転換、物々交換のユニークさに気づいて取り上げてくれたOさんに感謝です。

ただ、脚本に一抹の不安があったことも事実です。一読してすぐ、主人公がシングルマザーという点に、わたしは小さなひっかかりを覚えました。実際、イイトコを利用されるお客様は子育て中のお母さんが多いし、その中には一定数シングルの方もいらっしゃるはず。そんなお客様が見て、どんな気持ちになるだろう?と心配になったのです。

思ったことや違和感は正直に伝えねば、です。そこで、そんな懸念を正直に伝えると、Oさんは「主人公が逆境にあるからこそ、観る側は感情移入しやすくて、応援したくなるんです」というようなことをおっしゃったと記憶しています。この物語の場合は、離婚経験があるということ、今の状況に対して親に小言を言われてしまう身であること、仕事の面接では落選続きであること。そんな厳しい環境に置かれた主人公だからこそ、物語を動かす力があり、また、観るものの心を動かす。そういうことかな、と思い直し、脚本はそのままで撮ってもらうことにしました。結果、これもイイトコが大事にしたいことの一つ、「お母さんを元気づけること」のひとつの形になったとも言え、今ではよかったと思っています。

お客様の反響と、物々交換に起こった変化

そうして秋の1日、イイトコの定休日を利用して大勢の方の手によって作られたショートムービー「めぐる」は、2ヶ月後の12月に無事、公開されました。

ムービーでは、最初は不運続きで鬱屈した日々を送っていた主人公が、カフェで物々交換に出合い、日常が少しずつ変化する様子がリアリティあふれる映像で綴られています。観終わったとき、自然と笑顔になっている自分がいました。ものがめぐる、思いがめぐる先にあるものって、きっとこういうこと。抽象的だった価値観が、映像を通して具体的になった点がすばらしいと思うのです。こじんまりとした空間に、さまざまな背景をもつ登場人物が、ちょうどいい距離感で存在している。こんなカフェがあったら自分も行きたいなと思える場でした。同じように思う人がいて、いつか、「『めぐる』を観て初めて来ました!」なんて言って訪れてくれたらいいなあ、なんて思い描いたりも。本当に素敵で、照れずに自信を持って、「ぜひ観てください」といろんなお客様にお勧めできたことが嬉しいです。

イイトコのSNSでもたくさんシェアしたりお知らせしたことで、お客様から「観ました!」とのお声もたくさんいただきました。「子どもが繰り返し観ています」なんてお声も。イイトコ以外のロケ地もすぐ近くなので、「ここはあそこの公園だよね」「この通りだよね」と、いつもの見慣れた風景が映像に登場する新鮮さを楽しんでくださる方もいらっしゃいました。知人のカフェマスターからは「感動した」というストレートな感想も届きました。嬉しかったなぁ。

今回、監督兼脚本家のOさんに物々交換の面白さを見出してもらったおかげで、自分でも自信を持ってこの取り組みを推し進めていくための「力」をいただいた気がしています。今までやってきた物々交換やこのカフェは間違っていなかったんだなぁ、と。今後もより多くの人に呼びかけて、たくさんの物が地域の中でぐるぐる「めぐる」体験を増やしていきたいなと思っています。物を捨てるのではなくて、次の人に手渡す行為って、自分以外の誰かの存在を想像することだと思うのです。この「他者を想像する」ってことが抜け落ちがちではないかなと思える今の社会。物々交換を通して、1人でも多くの人に他者とつながる体験をしてもらいたいと考えています。

実際、今までやってこなかった「物々交換推し」をたくさん手がけるようになりました。たとえば、毎日Instagramストーリーズで物々交換の棚のようすをアップして、入れ替わりのある様子を見せたり、初めてのご予約メッセージに「ぜひ何か不用品があればお持ちください」と返信してみたり、さまざまなディスプレイ法を試してみたり。こんな風にわたしが目を向け、「育てる」ようになったからか、初めて利用したり、興味深そうに眺めてくれたりするお客様が増えた印象があります。物々交換の棚は今日も輝いています。

難しかったコラボメニュー開発

公開に合わせてイイトコでは夫念願のコラボカフェも実施しました。店内に撮影風景の写真展示をして、そこに出演者さんからサインをしてもらったり、映画に登場する黒猫のぬいぐるみをモチーフにした黒猫クッキーや、黒猫ソフトクリームを提供したりしました。黒猫クッキーは、期間中、物々交換に参加してくれた人にプレゼントして、こちらも好評でした。

▽コラボカフェの内容を紹介したinstagram投稿はこちら

ただ、コラボカフェをやること自体が決まったのが映画公開直前だったので(正直、「コラボは来年のゾンビ映画のときに...」とのんびり構えていた)、内容を吟味できなかったことは反省しなければなりません。そのせいで、オリジナルの黒猫ソフトクリームづくりに苦労したり(造形がなかなか定まらず明らかに迷走)、なんなら、そもそも冬にソフトクリームじゃなかったかも.......と反省の嵐です。ここは、次回はもっと時間をかけて作り込みたいところです、はい。

撮影費用も物々交換!?

と、ここまでイイトコ初のブランデッドムービー『めぐる』についてご紹介してきましたが、映画制作となると、当然、かかる費用についても気になりますよね。実はここにも「物々交換」が関わっているのです。

「みんつく」は、プロの役者さんや撮影技術をお待ちの方たちが自発的に映像作品を作り、YouTubeやSNSで発表しているクリエイター集団です。誰に雇われるのでもなく、スポンサーが付いているわけでもなく、かけられる費用には限界があり、場所探しにもなかなか苦労されているとのこと。それなら、とイイトコでよければ無償で使ってくださいと申し出たところ、適当なロケ地を探していたみんつくと見事に利害が一致! スタジオとしてのイイトコの永年無償使用権と引き換えに、イイトコ初のブランディングムービーを作ってもらうことと相成りました。

こんなところでも「物々交換」が成立していました。

次回作はやっぱり「ゾンビ」

ブランデッドムービー公開〜コラボカフェという一連の流れを通して、イイトコが体現する価値観やビジョンをお客様にお伝えできたことはもちろんですが、これはカフェの話題作りやお客様へのエンタメになるなと思ったのが、今回の大きな気づきの一つ。ムービー作りを通して、いつも何か面白いことをやっている、目が離せない存在としてイイトコのことを認知してもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。何より、仕掛けている本人たちが一番楽しんでいるのですから。

ハートウォーミングなストーリーから、次回は、純粋に面白がれるゾンビ映画へ(ゾンビが嫌いな人には申し訳ありません)。次回作でも、イイトコの魅力や世界観を表現できるよう、(ゾンビ映画を通して)がんばります!

ぜひあなたの周りでも、ブランデッドムービーを経営に生かしてみてはいかがでしょうか? 自社のブランデッドムービーを撮るとしたら、何をテーマに、どんな光景を物語に落とし込みたいか、そして観た人にどんな印象を与えたいか、考えるのも楽しいし、有効だと思います。よろしければ「みんつく」の皆さんをご紹介することも可能です。お気軽にお声がけください。

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