救急病院...病棟閉鎖
私が看護学生の間に、病院でも様々な変化があった。
看護師の入れ替わりも激しかった。
私が看護師になったら一緒に働けることを楽しみにしていた、師長や義姉も退職してしまった。
無事に看護師になってから、先輩から指導を受けながら忙しい日々を過ごしていた。
看護助手とはまた違った仕事の責任。時間に追われる業務の量。
常に勉強。常に緊張。
看護師になってから気が付いた看護師の人間関係...など。
仕事が大変なことは、覚悟はしていたが、後から入ってきた看護師にイジワルな人もいて、それが辛かった時もあった。
それでも、医師をはじめ、尊敬できる先輩看護師や、助手さんたちのおかげで、仕事も徐々に覚えて、主に手術室を任され、手術がない日は日勤の病棟で働いていた。
看護師になって2年目、私は離婚をしていた。
中学生になった子供と2人でアパート暮らしだった。
その頃、病棟では看護師不足が深刻化していた。
私も日勤なのに、そのまま夜勤もやり24時間以上病院で働いていたこともあった(仮眠の配慮はしてもらえた)
あと1人でも退職者や体調不良者がでたら、もう仕事ができないくらい、ギリギリの状況だった。
そんな矢先、院長から緊急のミーティングのお知らせがあった。
噂では一旦手術をやめて、救急や入院患者も減らしていくのではないかと聞いていた。
師長でさえ、何も知らされてないようで、皆で様々な事を想像しながら、もう少しマシな勤務体制になることを期待していた。
そして、ミーティングの当日、院長から、
手術室、病棟の閉鎖。
そして役職、勤務年数関係なく、看護師と看護助手の全員解雇が告げられた。
病棟閉鎖の理由は院長と共に病院を支えていた副院長の辞職と、病棟の赤字が原因だと聞いた。
手術をすればするほど、赤字になり、病棟や当直アルバイトの医師の確保や給料問題等、その赤字を外来で埋めていたという。
私は意外だった。
外来と病棟の役割りが違うから一概にどちらが楽とは言えないが、外来が黒字であの過酷な病棟が赤字だったなんて...。
全員解雇といっても、その時点でまだ入院患者や手術の予定もあるから、ここから10ヶ月ほどかけて、徐々に患者さんを減らし、病棟を閉めていくと説明された。
いつも過酷な勤務で、その割には給料が安いし、愚痴や文句を言いながら働いていたけど、それでも目の前にいる患者さんのために、皆で懸命に頑張ってきた。
そんな病棟が無くなる、私たちは解雇になり、バラバラになるなんて、想定外過ぎて、院長が会議室からでた後、しばらくしてから皆で泣いた。
病棟閉鎖になることで、早めに退職する人もいた。
そして10ヶ月もかからず、半年ほどで病棟の患者さんは1人もいなくなった。
私が医療現場を初めて知り、看護師を目指した病院。
尊敬していた院長や先輩、仲間たちと定年まで働きたかった。
そして、地域医療に必要不可欠なっていた、救急の受け入れ先がなくなり、1番困るのは病気になった人達だ。
私は悔しかったし、とても残念だった。
そんな思いとは関係なく、数ヶ月後、私は解雇退職となった。