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もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対〜クリスマスイブに礼華はるさんに出会ってしまった話〜

「君がいないと何にも出来ないワケじゃないと
ほら朝食も作れたもんね
でもあまり美味しくない」


5年前に贔屓が退団した後の私はまさにこの状態だった。仕事も家事もいつも通り出来るし友達と飲みに行って笑う事も出来る。
でもふとした時に「あぁ、あの舞台でもう贔屓を見る事は出来ないのか」と言い知れない悲しみに襲われ、今まで感じた事の無い寂しさを心のずっと奥の方に抱える日々。

贔屓が在団中は西でお稽古があると聞けばお手紙をもって日参し、東でお茶会があると聞けば新しいワンピースを買い、海を超えた台湾で公演をすると聞けば航空券を取り、とにかく毎日忙しかった。財力も体力も削られるが舞台で輝く贔屓を見られるなら私は全てを頑張れた。

彼女は退団後の今も進化を続けて新規ファンをどんどん獲得して唯一無二の存在として輝き続けている。今の彼女も素敵だし応援しているけれど、私は宝塚の男役として存在していた彼女が何よりも好きだった。熱量を失わず応援している友人を見る度に、少し熱量が減ってしまった私はなぜか罪悪感を覚えていた。

贔屓が退団後も宝塚を愛する気持ちは変わらない。どの組のジェンヌさんも素敵で、何よりあの煌びやかさで非日常に連れて行ってくれる宝塚という世界が私は大好きだ。
同じ公演を何回も見る事は無くなったけれど毎公演楽しく観劇を続けていた私のところにもコロナは容赦無くやってきた。せっかく取れた公演が中止と言う事が立て続けに起こり、観劇の頻度がどんどん減っていった。

もうあんなに熱くなれる日は来ないと思っていた私にある日うれしいニュースが飛び込んで来た。鳳月杏さんトップ就任である。鳳月杏さんといえば押しも押されもせぬ超実力派男役。「アリスの恋人」でひたすら眠そうな可愛いヤマネだったかと思えば「金色の砂漠」でイケおじ大好き界隈を根こそぎ落としていった、「なんだかんだで結局ちなつさんばっかり見てたよね」でお馴染みのスーパー脚長ジェンヌさん。そんなちなつさんのお披露目とあれば是非観に行かねばと確保したチケットは思いのほか良席で、ほくほくしながら観劇の日を迎えた。

久々の良席はありがたい事にオペラが無くてもお顔がわかるお席で、ちなつさん以外のジェンヌさんをしっかり見られる余裕すらあった(友会本当にありがとう)そんな中現れたのが礼華はるさんである。

礼華はるさんと私の出会いは何年も前にスカステで放映していた「男役道」。各組のどちゃくそ色気振り撒き上級生が下級生に男役としての心構えや技術を継承するというコーナーだ。私の贔屓もそこで持ち前の人たらしっぷりを発揮していた(あの時の贔屓、下級生を軒並み落としてて最高だったな…)

その月組の回に下級生代表として参加していたのが礼華はるさんだった。恵まれた体格と私の大好きな切れ長の目をお持ちの彼女に目が止まった。せっかくの体格なのにおどおどとした気の弱そうなお姿が印象に残り、そこからは月組さんを見る度にお姿を確認する存在となってはいたものの、先述の通り観劇回数も減りスカステも機関誌の年間購読も解約した私には情報が入る術が無く、礼華はるさんの存在は記憶の片隅に追いやられてしまっていた。

そんな礼華はるさんがお芝居でしっかりセリフをもらい客席を沸かしていた。一瞬別人かと思ったがやはり間違い無く礼華はるさんだった。

「いやぁ、ちょっと見ねえ間にえれぇ大人になってしもて」私の中の親戚の叔母ちゃんが姿を現した。ここまではまだ余裕だった。昔気になったジェンヌさんが上級生になり素敵になっている。この程度の微笑ましさでおさまっていた。

この時の私はまだ知らない。この後に礼華はるというとてつもない男役に落とされる事を。

ショーでの礼華はるさんはとにかく出ずっぱりだった。上海の場面が始まり、オケボから誰か出てくるな?ちなつさんかな?と思ったらまさかのはるさんだった。そうなの?もうそんな感じで登場しちゃうぐらいの立ち位置なの?月組がご無沙汰過ぎで本当に無知な私はまずその登場に驚いた。

そこからはもうあまり記憶が無い。天紫珠李ちゃんを取り合うのかと思ったらまさかのちなつさんの取り合いで更に混乱した。私は実らない想いに苦悩する男役が大好きだ。狂おしいほど手に入れたいのに自分のモノにならない、礼華はるさんの苦悶の表情から目が離せなかった。不敵な笑みで周りを翻弄するちなつさんが見たいのに、礼華はるさんがそうはさせてくれなかった。

韓国の場面も良かった。韓ドラ大好き人間としてはよくぞやってくれたカムサハムニダアプロドチャルプタカムニダの思いだ。高身長切れ長のはるさんに韓国宮廷物は親和性が高過ぎて五体投地だった。ちなみに私はアンヒョソプが大好きなのですが、切れ長具合がはるさんに似てませんか?

MooZinGも大変良かった。
「THE ENTERTAINER」のS.T.A.R.S.からずっと変わらずアイドルを提供してくれる野口先生、我々の需要を分かりすぎてて本当に好き。アイドルなんてなんぼあってもええですからね。

そして群舞の礼華はるさんもとてつもなく良かった。長い手足を存分に活かしたダンス。心の底から楽しく踊るお姿に釘付けになった。上海の時には表情に夢中でしっかり見てなかったけど、タンゴできるって事は間違い無くダンスがお上手なんですよね。なんだよもう無双かよ。

多種多様な礼華はるという男役の引き出しをこれでもかと私達に見せつけて幕が降りた時、私は客席で頭を抱えた。こんなはずじゃなかった。「今年一年のご褒美だ〜♪」的な軽い気持ちで来たのであって、こんなに胸が締め付けられる予定はなかった。

だが出会ってしまったものは仕方が無い。この気持ちの行方は自分でもわからないけど、とにかく今は礼華はるという大海原へ船を漕ぎ始めたいと思う。

2025年、私のヅカヲタ第二章が幕を開ける。

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