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α世代の、α世代による、α世代のためのSNS オンライン上に存在するα世代の新たな居場所 【前編】

こんにちは、α世代ラボです。

α世代ラボでは、α世代の価値観や生態を明らかにすべく、α世代本人や彼らをよく知る方へのインタビュー記事をアップしていきます。

今回は、15歳以下の子ども向けSNSアプリサービス「フォーキッズ」を提供している、株式会社4kiz代表取締役CEO・本山勝寛さんと、α世代ラボ所長・高見との対談記事をお届けします!

共に事業を通して知る「α世代の特徴」「α世代におけるトレンド」「α世代の未来」などをテーマに、お話を深掘りしていきます。

α世代とは
Z世代の次に続く世代であり、おおよそ2010~2024年ごろに生まれた世代

α世代ラボ:『α世代』とは? 見えてきた「デジタルユーティリティ」と「自己肯定感」


本山勝寛(プロフィール)

株式会社4kiz代表取締役CEO。

東京大学工学部システム創成学科知能社会システムコース卒業。ハーバード教育大学院国際教育政策修士課程修了。

貧しい家庭に育ち、アルバイトで生計を立てながら独学で東京大学へ進学。アジア最大級の国際NGOである日本財団では様々な新規事業を立ち上げる。子どもサポートチーム等のチームリーダーを歴任した後、退職し独立起業。

6児の父でもあり、これまでに育児休暇を4回取得。ブロガーとして独自の子育て論、教育論も発信している。


■高見彰 (プロフィール)

α世代ラボ所長。

早稲田大学卒業後、総合広告代理店を経て2022年に株式会社On’yomiへ入社。小学校教諭の友人からα世代のエピソードを聞いたことをきっかけに「α世代ラボ」を立ち上げ。

α世代本人・ご家族や先生、識者・専門家などへの取材や調査の実施を通して当世代の研究・情報発信を行っている。


α世代の新たな居場所づくり

高見彰(以下:高見):本山さんは株式会社4kizを立ち上げ、α世代向けSNSアプリ「フォーキッズ」を運用されていますね。この起業に至るきっかけを、教えていただいてもよろしいでしょうか?

α世代向けSNSアプリ「フォーキッズ」とは
FacebookやInstagram、TikTok、Twitterなどは利用規約上、13歳以上しか使えず、12歳以下の子どもはSNSが利用できない状況です。また、規約違反して利用している小学生も多く、決して安全ではない状況です。そこで、親子で一緒に管理投稿する安心・安全な15歳以下の子ども向けSNSアプリサービスを無料で提供しています。

株式会社4kiz:公式HP

本山勝寛(以下:本山):起業には、前職で関わった仕事が関係しています。私は前職で日本財団に属し、様々な社会課題の解決のための支援活動を行っていました。最終的に子どもに対する支援事業の責任者を務め、全国に子どもの居場所施設を100拠点以上、開設するに至りました。

高見:子どもの居場所施設、ですか?

本山:「子どもの第3の居場所」と名付け、家と学校に次ぐ3番目の居場所、というコンセプトですね。子どもって、学校が終わったあとの居場所が意外とないんですよ。

今は共働きのご家庭やひとり親家庭も多いです。塾に行ったり習い事があるお子さんもいますが、そうでない子は家に帰っても親がいない。そのため放課後に安心して過ごせる場所を、地域の公共施設や民家などをお借りして提供していました。

高見:その居場所施設で、子どもたちはどういった過ごし方をするんですか?

本山:宿題をしたり、ゲームをしたり、自分たちで考えて工作をしたりと様々です。小学校1年生から6年生までの子どもたちが集まり、思い思いに過ごします。あと必要であれば夕食を作って、みんなでいっしょに食べることもあります。

高見:親の帰りが遅い子は、夕食をみんなで食べられるとうれしいですね。家に1人でいるよりは、安心して過ごせそうです。

本山:居場所づくりを通じて何を目指しているかというと、生活習慣や学習習慣を身につけてもらうことなんです。その中で周りの人と関わり、自分の存在が受容されていると感じて自己肯定感も高めていく。それが子どもの生きる力を育み、やりたいことを実現していく礎にもなります。

高見:子どもが自分1人では身につけにくい生活習慣や学習習慣を、コミュニティに属することで促していくんですね。

本山勝寛さん

本山:そうです。しかしコロナになり、リアルに集まることがむずかしくなりました。そんなときオンラインで繋がろうとしたのですが、子どもたちって大人が介入しないと繋がれないことに気がついたんです。オンラインでプログラムを提供しようと思っても、大人がセッティングしなければならない。FacebookやInstagramなど現存のSNSも、すべて13歳以上が対象です。子どもたち同士で好きなときに自由に繋がることができないって、これはちょっと解決すべき課題だなと感じました。

高見:なるほど。そうした経緯があり、12歳以下のα世代が利用できるSNS「フォーキッズ」を開発されたんですね。
※2024年5月に利用対象年齢を12歳以下から15歳までに変更

本山:あと、私は15歳~0歳までの子どもが6人いるのですが、当時11歳だった娘がコロナ禍に絵を描くようになったんです。家にいて時間があったので、紙だけじゃなくデジタルでも描くようになって。

高見:お子さんが6人ってスゴイ!笑。まさにα世代が勢ぞろいですね。

本山:ですよね笑。で、娘の絵を見ていたら、我が子ながら「上手くなってきたな」と思いました。これをSNSにアップしてシェアしたら、反響があっておもしろいんじゃないかな、と。
でもやはり、11歳が使えるSNSがない。α世代は学校でタブレットも使っているし、デジタルに精通している世代です。もう使わざるを得ない状況にいるのに、正式に使えるSNSがないのは時代に反していると思いました。誰もやらないんだったら私がやろうと思い、起業した経緯になります。

クリエイティビティを育むα世代のためのSNS

高見:私も立場上、α世代のご両親にお話を聞く機会が多いのですが、お子さんのSNS使用に関して、安全面を懸念されている方が多い印象です。「フォーキッズ」を提供されている本山さんから見て、α世代がSNSを使用することに対するメリットやデメリットはどうお考えですか?

本山:まずメリットは、アウトプットする機会が持てることですね。子どもたちってインプットの時間が多く、アウトプットに費やす時間がほとんどありません。学校や塾で決められた科目の知識をインプットして、家に帰ったらネットを繋げてYouTubeを見ている。これからの時代、インプットよりアウトプットの重要性が高まってくると思うので、その機会が持てるのは非常にポジティブな側面だと感じています。

高見:アウトプットの重要性が高まる、とは?

本山:昨今はAIも台頭するようになり、非常に変化の激しい時代です。既存の知識はAIやコンピュータに任せて、人間は人間にしかできないことを求められる時代になってきました。そうなるとやはり、創造性が重要です。創造性はインプットよりアウトプットをしてこそ育まれるので、子どものころからその経験を積めるというのは非常にメリットになるでしょうね。

高見:なるほどですね。逆にデメリットを感じることはありますか?

本山:やはり既存のSNSでも見られる、様々なリスクがあると思います。
例えば性犯罪に巻き込まれてしまったり、経済的な詐欺に遭ってしまったり。あと子どもたちの間で日常茶飯事に行われているのが、SNSいじめです。それにより傷ついてしまって不登校になったり、深刻な場合は命を落としてしまうニュースもよく見られます。気をつけたいのは被害者になるケースもあれば、加害者になるケースもあり得る、という意識です。

高見:「フォーキッズ」は、そのあたりのデメリットをできる限り解消していると伺いました。

本山:そうですね。フォーキッズを作るとき、安全面については徹底的に配慮しました。フォーキッズは親も閲覧できるし、設定によっては親がチェックしないと公開されない仕組みもあります。
子どもたちだけの閉じられた世界になることがいじめの起因になると思うので、親も見守ることができ、親も子も安心して使えるSNSにすることにはこだわりました。

高見:お子さんたちが交流している様子を親御さんも見ている、というイメージでしょうか?

本山:実際には親も忙しいので、隅から隅まで見ていることはないでしょうね。ただ心配になったら確認ができるし、それはかなりトラブルの抑止力になると思います。

高見彰

高見:デメリット対策もされていて、α世代が自由に交流できる。「フォーキッズ」はまさにオンライン上での新たな居場所になっていますね。

本山:そうですね。やっぱり子どもは親にどんなに言われても、自分が楽しいと感じなければやらないと思うんですよ。投稿した自分の作品にコメントがつくと嬉しいし、もっとアウトプットしたいという気持ちが促進されます。子どもたちに創造性を発揮できる場所を提供したいという思いもあるので、どんどん楽しみながら活用してもらいたいです。

高見:フォーキッズの特徴として、他のSNSと違う機能はありますか?

本山:リクエストやコラボ機能がありますね。例えば絵を描く子に「こんな絵を描いてほしい」とリクエストできたり、自分がリクエストを募集することもできます。子どもたち同士でコラボ企画を立ち上げることもありますよ。趣味に特化したコミュニティ(例:猫好き)も盛んですし、先日はしりとり大会が行われていました。

高見:しりとり大会は子どもらしさも感じて、微笑ましいですね。α世代の間では、今どういったものが流行っているんですか?

本山:女の子だと、生活音やコスメの音をあげる動画が流行っています。いわゆるASMRというものですね。大人の間でもtiktokでよく見られますよね。

ASMRとは
「Autonomous Sensory Meridian Response」の略称で、日本語に訳すと「自律感覚絶頂反応」です。視覚や聴覚への刺激によって、主に頭部から背中にかけて生じるゾクゾクするような感覚を指しており、ASMR動画を視聴してリラクゼーションや安眠などのポジティブな影響を受ける人もいます。

Y!mobile:ASMRとは?種類や人気の理由などをわかりやすく解説より

高見:コスメの音ですか?

本山:そうなんです。おそらく100均などで買ったメイク道具をカチャッと開けたり……私も詳しくはわからないんですが笑。 大人顔負けですよね。

高見:男の子だとどうでしょうか?

本山:男の子はやっぱりゲーム実況ですね。マインクラフトやRoblox(ロブロックス)など、自分がプレイしている動画をあげている子が多いです。あと、猫ミームなどを使ったネタ動画も人気があります。


後半に続く


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