FC岐阜 2025シーズンプレビュー ~大島岐阜の初年度を占う~

FC岐阜の2025シーズンが始動。昨シーズンは、終盤に7試合負けなしと追い上げるもJ2昇格は叶わず、6年目となるJ3リーグを戦うこととなった。今シーズンは天野監督の後任として、昨シーズン鹿児島ユナイテッドFCを率いた大島監督を招聘。昨シーズンまでと同様に、「ボールを保持し、攻撃的で、観ている人に感動を与えるサッカー」を目指す。

今冬の移籍市場も大方終了し、開幕に向けた準備が進んでいるが、今シーズンの編成から大島監督がどのようなサッカーを展開するか考察してみたいと思う。




1. 大島監督が志向するサッカー

2025シーズンからFC岐阜を指揮する大島監督。チーム編成の意図を推測するため、まずは大島監督がどのようなサッカーを志向するか調べてみた。

冒頭でも述べた通り、大島監督が志向するサッカーはボールを保持するサッカー。2024シーズン鹿児島を率いた際のゲームレビュー(2024 J2リーグ 第1節 群馬vs鹿児島)とハイライト動画を参考にし、所感を以下に記す。

・基本的な配置はボール保持が4-2-3-1、ボール非保持は4-4-2。
・ボール保持では、SBがインサイドに絞って攻撃参加をする偽SBを採用。ボールの位置によって左右どちらのSBも中央でプレーする。
・両SHは大外の高い位置に配置。中央にてSBと中盤で起点を作ったところでSHへ展開し、SHの突破力を生かしてチャンスメイク。両SHの質が肝になりそう。
・高い強度でハイプレスを受けた場合は、ボール保持を諦めてロングボール主体で組み立てることもある。
・守備時は4-4-2の形を取るが、ハイライトをいくつか観た印象で言うと、ゾーンともマンツーとも言えない中途半端な4-4-2であった(岐阜も人のことは言えないが)。ボール保持の質が高いJ2チーム相手では、守備対応が後手に回ることも多々あり。J3チーム相手ではどうなるか、、、


2. 2025シーズン選手一覧(2025年1月7日現在)


2025シーズン選手一覧


3. 2025シーズンFC岐阜の編成について

大島監督が4-2-3-1を採用すると仮定した場合、各選手の配置は以下のようなイメージ。2025シーズンの編成について、各ポジションごとに評価と所感を記す。 ※評価:S>A>B>C


4-2-3-1

・GK:"A"

昨シーズン大怪我をした茂木は無事更新し、今シーズンの復活が期待される。茂木復活までの穴埋めか定かでないが、今治の守護神であったセランテスを獲得。また、昨シーズン終盤の立役者の1人である後藤の更新や、中京大で好セーブを連発していた山口を獲得し、茂木復活後はJ3の中ではかなりハイレベルな陣容といえるだろう。昨シーズンまでと同様に自陣からのビルドアップを実行するのであれば、セーブ力だけでなく、キックの精度も求められる。


・CB:"A"

絶対的守備の要である甲斐の更新をはじめ、ボール保持では欠かせない野澤や寺阪の期限付き延長に成功。怪我さえ無ければ、今シーズンもチームに欠かせない存在になるだろう。また、FCソウル U-18から加入のキムユゴンは韓国U-18代表ということでポテンシャルは十分。レギュラー争いにどれだけ食い込めるか楽しみである。全体を通して1点気になるのは、CBの枚数は若干足りない可能性があるため、後述する井川が川上のようなタスクを与えられる可能性も考えられる。


・SB:"B"

昨シーズン序盤戦でアシストを量産した石田と、ビルドアップに安定感をもたらした文が契約更新。大島監督のサッカーをよく知る外山の加入も大きい。そして、京都産業大学から加入の大串は、偽SBの経験もあり、時にセットプレーのキッカーを任される程の技術の高さがあるため、偽SBを採用する場合はキープレイヤーになる可能性がある。いずれの選手も技術に優れるが、守備に関しては少し不安要素がある。そのような面から評価はBとした。


・DMF:"S"

2025シーズンに向けてのDMFはほぼ満点に近い陣容を揃えられたのではないかと思う。昨シーズン終盤の好調を支えた北と萩野が契約延長。岡山から長身で配球力に優れた井川を獲得。さらに大阪学院大学から、昨年のジュビロ磐田との練習試合で結果を出した箱崎を獲得した。箱崎がレギュラー争いに食い込んできたら、盤石な体制になるだろう。そして、FC岐阜在籍が5年目となる生地はここ数年SBでの出場が続いているが、本来のポジションであるDMFでも出場が可能であるため、かなり層が厚いと思われる。


・OMF:"A"

こちらも昨シーズン終盤を象徴する選手となった西谷が期限付き移籍を延長。20歳と発展途上であるため、更なる進化が期待される。今回FC岐阜関連の移籍で一番の驚きであった山田直輝の獲得。年齢は確かに不安要素であるが、怪我無く湘南在籍時のインテンシティと足元の技術を維持できるのであれば、J3では十分すぎる選手。また、試合以外の振る舞いが他の若手選手の良い刺激になるのではないかと思う。昨シーズン初ゴールを記録した横山も契約延長。個人的に応援している選手ということもあり、楽しみな選手の一人。足元の技術は申し分ないため、結果がついてこれば申し分なし。


・SH:"B"

大島監督が昨年と同様のサッカーをするのであれば、SHは非常に重要なポジションであるが、突破力のあるSHを揃えられたかというと少し物足りなさを感じる。特に右SHは、荒木と泉澤が揃っている左SHに比べ、縦に突破できる火力のある選手が中村くらい。松本ももちろん良い選手であるが、ドリブル突破に強みを持った選手ではない。粟飯原も右サイドでプレーできる選手だが、同様にドリブル突破に強みを持っている選手ではないため、右SHでの起用は少ないと予想する。場合によっては、右SHに荒木、左SHに泉澤のような起用もあるかもしれない。


・FW:"C"

昨シーズン途中に田口、今冬に藤岡が抜かれ、即戦力が求められるポジションだが、八戸から獲得の佐々木を除いては、2桁得点を記録した選手はいない。長井やオウイエはもちろんポテンシャルの高い選手であるが、Jリーグでの試合経験の少なさから、戦力としてカウントできるのは夏以降になるのではないかと思われる。肝心の佐々木も開幕からチームにフィットするとは限らないため、そうなるとFW最年長である粟飯原に期待したいところ。粟飯原の出来によっては、夏に追加の補強があるかもしれない。


4. 大島岐阜の2025シーズンを占う

ここまでを踏まえて大島岐阜の2025シーズンを占ってみたい。

まず前提として、大島さんの監督経験は、鹿児島ユナイテッドFCにて2023シーズン途中からJ2に昇格した2024シーズン途中までの約1年間のみ。昇格は経験しているものの、シーズン通しての監督経験はなし。監督経験が少ないことで不安の声が聞こえるが、経験豊富な大橋さんをヘッドコーチに据えて、サポート体制は整っていると思われる。大島監督時代の鹿児島の試合をハイライトで幾つか見たが、守備に少し不安要素があるので、大橋さんには昨シーズン同様に守備戦術の構築を任されているのではないかと推測している。

上述した通り、ボール保持を主体としたサッカーが予想されるが、北や西谷に加え、新たに加わった選手もJ3の中では足元の技術高いので、大島監督のやりたいサッカーが浸透すればある程度は試合を支配できるだろう。一方で、自陣でビルドアップを行う場合は、ショートカウンターを受けるリスクを覚悟しなければいけない。昨シーズンの終盤はこのリスクを排除するため、自陣でのビルドアップを極力減らしていた。大島監督も自陣でのビルドアップが難しいと判断した場合は、ロングボールを多用する傾向にありそうなため、ゲーム中の柔軟な対応に期待したい。

守備に関しては、基本的な配置が4-4-2となりそう。3バックを採用するチームが多いJ3では噛み合わせが悪くなる場合も多々あり、どのような対策を取ってくるかは注目したい。また、偽SBでSBが空けたスペースを突かれることが多くなると予想されるため、こちらについても注目したい。

全体の陣容的には、やはりボール保持に重きを置いた編成になっており、やや守備に不安がある。昨シーズンは失点数が多く、守備に課題が残るシーズンだったが、今シーズンも昨年の二の舞になる可能性は十分にある。竹元SDによると、昨シーズンはインテンシティ不足が不調の原因だったとチーム内で結論付けられている。インテンシティはもちろん守備力に繋がるため、シーズン通してハイインテンシティを維持できるかが鍵となるだろう。


5. 2025シーズン開幕戦のスタメン予想

せっかくなので、2025シーズン開幕戦(vs FC大阪戦)のスタメンを予想してみる。


2025シーズン開幕戦 スタメン予想

まず、GKはセランテスと予想した。理想は茂木が復帰していることだが、2024シーズン終了の時点(11月末)で全体トレーニングに復帰していなかったことを考慮すると、開幕までにベストコンディションにもっていくのは難しいと考える。

DFラインは右から大串、甲斐、野澤、外山を予想する。偽SBを採用するのであれば、大串を抜擢する可能性は十分にあり得る。また、外山は大島監督のサッカーを経験する唯一の選手であることと、SBは戦術の肝であることから、信頼を置く外山を選ぶ可能性が高い。CBは昨シーズンの実績を考慮して、甲斐と野澤を選んだ。

次に、2列目のDMFは北と萩野を予想する。今シーズンもビルドアップ時はDMFを起点に前進する事になると思われるが、昨シーズンと同様に安定した繋ぎが必要になるため、引き続きこの2人が重宝されると推測する。

3列目は、両SHに中村と荒木、OMFには西谷を予想する。SBと同様に戦術の肝となるSHには質が求められるため、現段階で突破力の高いと思われる2人を選択。OMFはワントップのサポート、裏抜け、ボールを受けて運ぶ必要があることから、西谷の技術力と機動力が重要になると思われる。

最後、FWには佐々木を予想。昨シーズンの八戸でのパフォーマンスを見れば、ボール保持ではポストプレーやフィニッシャーとして、非保持では献身的な守備を実行してくれると期待している。昨シーズンの八戸での戦術とは真逆になるため、フィットするまで時間がかかる可能性はあるが、現メンバーの中ではファーストチョイスになると思われる。


6. 最後に

良し悪しは置いておくが、ここ数年は「ボールを保持し、攻撃的で、観ている人に感動を与えるサッカー」と目指すべき指針を定めて、結果はまだついてきていないものの、観ている側としてはこのサッカーを実現しようとしていることは十分に伝わってきている。今シーズンも苦しいシーズンになるかもしれないが、大島監督がシーズン通してどのようなサッカーを見せてくれるか非常に楽しみである。

そして、ここまで長々と失礼いたしました。もし最後まで見ていただいた方がいるのであれば、ご拝読ありがとうございました。今シーズンはレビュー記事もアップしようと思っていますので、機会がありましたらご一読いただければと思います。今シーズンもよろしくお願い致します。

いいなと思ったら応援しよう!