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FC岐阜2024シーズン振り返り

2024シーズンのJ3リーグが終了。FC岐阜は15勝8分15敗の8位で今シーズンもJ2昇格を逃した。シーズン中盤の絶望的な状況から持ち直し、順位としては昨年と同じであった。今まさに新シーズンに向けての準備が進んでいるところだが、2024シーズンがどんな1年だったか記録として残しておこうと思う。

1.2023シーズン振り返り

2024シーズンを振り返る前に、上野監督初年度の2023シーズンを振り返りたい。監督初挑戦となった上野監督は2023シーズンJ3リーグを14勝12分12敗の8位でを終えた。失点数が35とリーグ2位の堅守を実現した一方で、得点数がリーグ13位の44と攻撃力に課題が残るシーズンであった。

上野監督が志向するサッカーは、ボールを保持しながらゴールを目指すスタイル。ボール保持時は、少しでも多く相手陣地内でプレーしながらゴールを目指し、ボールを失った後は即時奪回し、ショートカウンターを狙う。攻撃のための守備、守備のための攻撃、を配置最適化により実現しようとした。

下図は、2023シーズンの主なスターティングイレブン。DAZNやスポーツサイトで紹介される初期配置は4-4-2だが、ボール保持と非保持で可変する。非保持は初期配置と同じように4-4-2でブロックを組むが、ボール保持時は4-4-2から相手に合わせて可変する。図2、3は可変の例であるが、右SHがインサイドに移動したり、SBを中盤に組み込む偽SBを採用する等、様々な形を試していた。

図1 2023シーズン初期配置(ボール非保持)
図2 2023シーズンボール保持例1
図3 2023シーズンボール保持例2

2024シーズンに向けて更なる進化を遂げた上野岐阜を見ることができるかと思ったシーズンオフ。主力のンドカ、村田、窪田、藤谷をJ2のチームに抜かれ、厳しい冬の移籍市場に。特に、攻撃陣の3人は合わせて21得点と、チーム得点の約半分を記録しており、大幅な戦力ダウンとなった。失った戦力を補いながらJ2昇格を目指すのが、2024シーズンの上野岐阜に課せられた使命であった。

2.2024シーズン 移籍&結果一覧

●2024シーズン移籍一覧(シーズン途中も含む)

●2024シーズン結果一覧
https://www.fc-gifu.com/match_results/match_results_cat/match_results_2024/


3.第1節〜第7節:最高のスタートダッシュ

さて、それでは2024シーズンを振り返る。主力を抜かれたことにより攻撃力が心配されたが、新たな戦力とシーズンオフのトレーニングが功を奏し、第7節時点で5勝1分1敗の首位と最高のスタートダッシュを切る。

図4、図5に2024シーズン序盤の主な配置を示す。昨シーズン同様に4-4-2をベースにボール保持で可変する形。基本的には右SBを押し上げて、藤岡をIHに降ろし、3-2-5(3-2-2-3)のようなフォーメーションを形成する。右SBと右WGは場合に応じて内と外が入れ替わる。右SBの石田による果敢な攻撃参加、良質なクロスにより多くのチャンスを生み出し、藤岡や田口が得点を量産した。また、新加入した左サイドの荒木が質の違いを見せつけ、ここぞの場面で得点を挙げてくれた。

図4 2024シーズン初期配置(ボール非保持)
図5 2024シーズンボール保持 例

4.第8節〜第18節:狂い始めた歯車、そして上野監督辞任

この勢いのまま今年こそはJ2昇格できるのではないかと期待していたが、第8節以降、9試合勝ちから遠ざかることとなる。

岐阜が勝ちから遠ざかった理由として、1つは攻撃の軸となる右サイドが相手から警戒され始め、石田が良い状態でクロスを上げられなくなった、もう1つはビルドアップのルートが各チームにバレ始めると、ハイプレスによる格好の餌食となり、自分たちのリズムを作ることができなくなった。その他にも、茂木の長期離脱等も大きく影響したと考える。調子が一向に上がらない中、スタメン変更による改善を進めるが、解決には至らず。

このような状況下で、上野監督が責任を取る形で辞任。ヘッドコーチの天野さんが暫定監督として、指揮を執ることとなった。第17節で久しぶりの勝利を挙げていたが、この試合と第18節は天野さんが指揮していたことが辞任発表で判明した。


5.第19節〜第27節:天野暫定監督就任、しかし…

天野暫定監督が就任後、戦術的に大きな変更はなく、これまでの戦い方に天野さんのエッセンスが加わる形となった。試合前後の監督コメントでは、常々「攻撃的」という言葉を挙げ、相手陣内での守備や縦パスを入れる意識等の改善に努めた。攻撃的に前のめりになることでハマる試合もあった一方で、チームとしてバランスを崩すことも多々あり、勝てない時期が続いた。更に、得点源である田口が金沢へ完全移籍し、窮地に立たされることに。調子が上向かないまま負けを重ね、プレーオフ圏内はおろか残留争いに巻き込まれることとなった。ただ、この苦しい時期に蒔いた種はリーグ終盤戦で花を開くこととなる。


6.第28節〜第38節:5バック採用、チームは上昇気流へ

第27節までに、岐阜の失点数は42と下から5番目の数字。1試合平均1.6失点と守備の立て直しが急務であった岐阜はこれまでの4バックを捨て、5バックへのシステム変更を決断する。5バック変更後、最初の2試合は敗れるも第30節の金沢戦で勝利すると、そこから最終節までの9試合で4連勝を含む6勝2分1敗で怒涛の追い上げを見せた。プレーオフ圏内まであと少しというところまでいったが、最終的には8位となりJ2昇格は叶わなかった。

5バック変更後の配置について、ボール非保持は5-4-1だが、ボール保持は3-4-2-1ないしは3-2-5の形を取るため、可変方法が変化しただけで、システム自体はこれまでと同様であった。守備の改善のために5バックへ変更したが、単に後ろに人を増やすだけでなく、自陣でのボールロストを減らすような戦い方にシフトした。その例として、ここまでゴールキックは自陣から繋ぐことが多かったが、右WBの松本やシャドーの西谷といった前線の高身長選手にロングボールを蹴ることを徹底していた。また、CBからの裏へのロングボールも増え、自陣でのボールロストが減った。

図6 5バック変更後 ボール非保持
図7 5バック変更後 ボール保持

5バック変更による効果か分からないが、この1年間深めてきたトレーニングが実を結び、ここに来てシーズン序盤の攻撃力が戻った。31節から最終節まで8試合連続複数得点を達成し、最終的な得点数が64得点とリーグ2位の数字であった。その中でも、第32節長野戦の1点目、第33節岩手戦の5点目、第34節今治戦の2点目、3点目は再現性のある素晴らしい崩しをみせた。例として、長野戦の1点目を取り上げたい。

西谷から野澤にボールが入った際に、図8のようにひし形の関係性を形成する。野澤から萩野にボールが入ると、北が1列降りて、それと同時に西谷が北がいたスペースへ走りこむ。北→藤岡→西谷とダイレクトにつないで、西谷のビューティフルゴールでフィニッシュ。ここでのポイントは、「ポジションの流動性」である。チームとして立ち位置を決めた上でその立ち位置を入れ替えると、マンツーでついてくる相手を剥がすことができる。アドリブでのスペースを作る動きではなく、チームとして決められた形での流動性なので全体のバランスを崩すことがない。そして、もし奪われたとしてもいい距離感で相手にプレッシャーをかけ、即時奪回に繋げることができる。

図8 第32節長野戦1点目①
図9 第32節長野戦1点目②
図10 第32節長野戦1点目③

有料記事内の選手コメントのため、直接の引用は避けるが、上記した旨のコメントが第34節今治戦後にされているので、ご参考までに。

ただ、この攻撃はシーズン終盤になって急にやるようになったわけではなく、以前からチャレンジは続けていた。第21節奈良戦の1点目は北と藤岡がポジションを入れ替わりながら上手くボールを循環させ、ゴールまでつなげている。動き方は異なるが、上記の西谷と北の関係性と同じである。このように上手くいった試合もあるが、同様の崩しを再現性高く実現することができていなかった。戦術理解がチーム全体へ浸透するのに、シーズン終盤までかかってしまった。また、確証はないのだが、上野監督時代はあまり見られなかったので、天野さんへ監督交代した後に仕込まれたのではないかと推測している。


7.2024シーズン総括&2025シーズンに向けて

さて、2024シーズンを良い締めくくりで終了した岐阜だが、年間を通しては非常に波のあるシーズンだった。タラレバにはなるが、上手くいかなかった期間をもっと短くできれば、プレーオフ進出も夢ではなかったと思う。

そして、天野監督の今季限りでの契約満了が発表された。個人的には、今シーズン終盤の戦いをベースに、更に洗練されたサッカーを見せてくれるものだと思っていたので、非常に残念である。結果がすべての世界である以上は仕方のないことではあるが、次の監督選定を含め、ちぐはぐなチーム作りだけはやめてほしいところ。シーズンを通して勝ちを重ねるチームにするためにはどうすべきなのか検証し、来シーズンに繋げてもらいたい。

年間を通してはどうしても上手くいかない期間が出てくるが、そうした期間にも勝ち切るためには個で打開できる選手の補強は必須。昨年であれば、村田、窪田、ンドカは、チームとしてあまり良くない試合でも、個人技やスピード、フィジカルといった個の力で理不尽にゴールを決めることが出来る選手だった。もちろん今シーズンも質の高い選手は多くいたが、あくまでコンビネーションによる打開力で留まっていたかと思う。河波や西堂はこのような意図で獲得されたと考えられるが、インパクトを残すまでには至らなかった。一つの指標に過ぎないが、昨年と今年のドリブル数(1試合平均)を比較してみると、昨年の11.3に対して今年は8.0と下から2番目の数字。ドリブルで打開できる選手が少なかったため、パスに頼らざるを得なかったとも言える。

一方で、得点王を獲得した藤岡やシーズン終盤に圧倒的なパフォーマンスを見せた北は上位カテゴリーから注目の的であるのは間違い無いだろう。フロントには何とかして慰留に努めてほしい。また、今シーズンはレンタル組に依存していたポジションがいくつかあるので、そこへの補強も必須だろう。特にCBは6人中3人がレンタル組である。寺阪は所属元の状況からもう1年レンタルできる可能性は高いが、野澤はコンディションが戻ればJ2でも通用する選手のため、残すことは難しいと考える。

まとまりの無い文章で恐縮だが、こんなところで2024シーズンの振り返りを終了したい。来シーズンのJ2昇格を祈っている。

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