人は見た目でわからない

学生時代、バイト先で出会った男の子とお付き合いしていた。

喋らなかったらイケメン、喋ると三枚目な男の子だった。
自覚症状もあるのだが黙ってはおられない性分のよう。
憎めない奴、性格は悪くない人だった。

当時の私は、学校で周りの友人にどんどん彼氏ができ、会話で置いてきぼりになる機会が増えた。
相談されてもよくわからない、共感もアドバイスもできない。



「そろそろ私も彼氏欲しいなぁ〜…」
と思っていた頃、前述の彼から
「付き合って欲しい」
と告白されたのだ。

彼とは共通の趣味もあり会話も楽しい。
それに私如きが彼のようなイケメンから言い寄られることは、今後の人生で二度とないだろう確信もあり付き合ってみることにした。

お互いに初めての彼氏と彼女。
新鮮で楽しい日々。
置いてきぼりになっていた友人との会話にも入れるようになった。

あぁ楽しいなぁ…と思いながら半年が過ぎた頃。

学校もバイト先も同じ友人から
「●●君（彼氏）が最近◯◯ちゃん（バイトの後輩）から告白されたって聞いたんだけど、知ってる？」
と聞かれた。

え、マジで？？

バイト先には私達が付き合っていることを隠していない。
その後輩の彼女も私という存在はわかっているはずなのだが知らなかったのかな？
少し申し訳ない気持ち。

その子は見た目も仕事も真面目。
教えたらすぐ理解する賢い子。
性格も外見も控えめで大人しい。
親しくはないが、何人かいる後輩の中で私が好感を持っていた子だった。

さっそく彼氏に聞いてみると
「告白されたけど、僕は友達として仲良くしようと言って断ったよ」
とのこと。
心配させまいと私には話さなかったのか…
この件はすぐに解決したと思っていた。

ところが更に数ヶ月後、同じ学校の同僚が私にまた聞いてきた。

私がシフトに入っていない日、仕事終わりに二人（彼氏と告白してきた後輩女性）が待ち合わせして帰っているけど大丈夫なのか？と。
なんなら後輩彼女は自分がシフトに入っていない日でも彼の仕事が終わるのを外で待っていたが、本当に大丈夫なのか？と。

え…ちょっと待て…それはなんか嫌な気分だぞ？

そして私、自分がシフトに入ってない日に外で彼を待つとかやったことねーな…。
（それはそれでおかしい？）
後輩のその子の方がよっぽど彼女っぽい…。

さっそく彼氏を詰問。

すると彼は観念してベラベラ喋る喋る…。
嘘がつけない良い奴なのだが、こんな時まで嘘がつけない。

以前ちゃんと断ったけど、彼女から「友達として」度々相談を持ちかけられた。

僕も（私）と付き合えてなかったら彼女と付き合っていたかもしれないと思うほど良い子。
大人しそうな雰囲気が自分の好みのタイプ。

ある日、その後輩彼女から「思いを断ち切れない！」「２番目でもいいから！」と泣きつかれた。
可哀想なので時々二人で会ってお喋りして帰っているだけ、決してやましい関係はない。

とのこと。

…… ハァ？？？

いやいや、お前、正直過ぎる。

好みのタイプとか聞いてないし。

ウハウハな状況にウキウキしてただけだろ？

同僚に見られるような場所で待ち合わせするとは阿呆なのか？

あまりのアホさに呆れ、私から別れを切り出したら、今度は彼から「別れたくない！」と私が泣きつかれた。

以降、彼がストーカー気味になり、メンヘラ気味になり、別れたくても別れられない状態が一年以上続いたという悪しき思い出…。

しかし私はその彼の浅はかな浮気疑惑よりも何よりも、相手の後輩女性に驚いた。

彼女はどちらかと言うと全く目立たないタイプ。
美人という訳でもない、全てのパーツが小さめな和風のお顔。
あの大人しくて控えめで真面目な彼女にそんな裏の顔があったとは…。

シフトが一緒になれば何事もなかったかのように私と仕事している。
いつものように控えめで真面目に大人しく…。

今思えば同僚に見られるような場所で待ち合わせしていたのは彼女の作戦だったのかもしれない。
いや、賢い彼女だからきっとそうだろう。
気づいていないのは阿呆な男だけ…。

あぁ、女は怖いなぁ…。

彼氏が泣きながら「◯◯（後輩彼女）さんと今後一切連絡を取らないから！」と宣言してきた。
実際どうだったのかはわからない。
ただ、その後も一年以上、出勤日数は減ったものの彼女は私と同じ職場で普通にアルバイトしていた。
様子もずっと変わらず。

あぁ、女って怖いな…。

いかにも派手で美人、彼氏を横取りしそうな女の子が実は男関係に真面目で筋が一本通っていることがある。
その逆も然りということか…。

顔だけ男から聞いた話なので、今思えばどこまでが真実だったかはわからない。

だが奴には自分の都合の良いように脚色して話せるほどの才も無かったように思う。
ただただ馬鹿正直な人だった。

人は見かけによらないなぁと
人生で初めて、そして心の底から驚いた出来事。
それ以来、私は見た目で人を判断しないよう心掛けるようになった。

皆さんもお気をつけあれ。
人は見た目ではわからないんだよ。