【読書感想】「PLUTO」浦沢直樹×手塚治虫
読書感想というか、読漫感想というか。
今から書く感想は漫画本についてだ。
私は幼少期にアニメの鉄腕アトムを観ていた。
ネットで調べるとそれは第二期のもので1980年10月から放送されていたらしい。
私が幼稚園に入るか入らないかの頃だ。
内容を理解できてたんだろうか?
観ていたのは再放送だったのかもしれない。
親が家事で忙しい時間帯にやっていたのだろう。一人で観ていた記憶がある。
大学生になった私は、勉強も中途半端、遊びも中途半端、バイトも中途半端…つまり時間があった。
そんな時にアニメ鉄腕アトムでずっと疑問だったことをふと思い出したのだ。
ライバルの子供ロボット、アトラスがある時急に青年ロボットに変身していたのがずっと引っかかっていた。
見逃し回があったのだろう、子供の理解が追いつかなかっただけかもしれない。
今のようにYouTubeもなかったし、ネットも黎明期でニッチな情報は少なかった。
頭に浮かぶと気になって仕方なくなり、私は大学生協で鉄腕アトムの文庫版漫画をバイト代で大人買いした。
アトラスは一度壊れ、自分自身の手で青年ロボットに改造したらしい。
へぇ〜…チャンチャン。
長年の疑問は結構アッサリ解決した。
しかし驚いたのは、私の記憶ではアトラスがアトムの最強の敵だったのだが、漫画の中ではちょい目立つキャラ程度だったこと。
アトラスの存在感が薄れるほど感慨深い話が他にも沢山あった。
その中でもプルートという世界最強ロボットは、テーマが重めで、話も複数話に分かれており手塚治虫先生の思い入れが強いことが伝わってくる話だった。
しかし、残念なことにそのプルートはアトラスのようなお洒落さが全く無い。
ずんぐりとしたどちらかというと野暮ったい姿。
ベタッと黒塗りでツノが生えてる、ハッキリ言ってなんかダサい。
見た目の雑魚キャラオーラが凄いのに、各国最高水準のメチャかっこいいロボット達を倒していく。
アトムも絶体絶命のピンチに追い込まれる。
アトラスきっかけで読んだ鉄腕アトムだったが意外な発見だった。
それから数年後、浦沢直樹先生が手塚治虫先生の鉄腕アトムを原作に「PLUTO」という漫画を描いたらしい、ということを知った。
「アトラス」だったら真っ先に読んだかもしれない。
しかし「PLUTO」かぁ…
あのずんぐりむっくりした冴えないルックスが頭に浮かび、どうも触手が動かなかった。
そして今になり、古本屋であの「PLUTO」を発見したのだ。
どうも2年前にアニメ化され、漫画が市場に出回ったようだ、もちろん購入。
読んだ感想。
凄い…仰天した。
手塚治虫先生の漫画には心理描写が少ない。
描かれるのは「…」の一場面だけで「後はお前らが自分の頭を働かせて考えろ」と放り出される感覚がある。
原作、プルートの漫画は確か2〜4話程度で完結する話だったように記憶している。
それが8巻…でも全然引き伸ばし感がない。
浦沢直樹先生オリジナルな部分も多くある。
しかしそれが違和感を感じさせない。
むしろ始めからそうあるべきだったような物語なのだ。
物語の全てに理由があり、無駄な場面はなく、手塚治虫先生にはなかった心理描写が事細かく描かれている。
確実に原作よりパワーアップしている気がした。
手塚治虫先生も満足、両手で輪を作ってニッコリ笑って「合格!」と言ってくれるであろう作品だった。
もし可能なら原作の鉄腕アトム「地上最大のロボット」を読んだ上で読んでほしい作品だ。