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電車でお見かけした女装家の方

去年の冬か今年の春頃だったでしょうか、子供と電車に乗っていたら、向かいの席に5〜60代と思われる大柄な男性と大柄な女性が乗って来られました。


はじめは気づかず別のことをしていたのですが、二人の方向から聞こえてくる話し声が何故かどちらも男性。
あれ?と思ってよく見ると、大柄で綺麗な女性だと思っていた方は女装家の方だったのです。
よく見ると声が低い女性ではない。



同窓会帰りだったのでしょうか、恋人というより昔の知人か友人が話しているような雰囲気。
女装家の方は女装はしているものの、ずっと男性の声で世間話をしておられる様子でした。


女装しているのにずっと男性として話しておられる様子は違和感がありました。

しかし、それより驚いたのはその女装家の方がとても綺麗で素敵なお姿だったこと。



控えめな色で質の良さが一目でわかるエレガントなお洋服、カツラだと思われるウェーブのかかったショートのグレイヘアーがとてもよくお似合いで、お化粧もマダム風で美しく、ネイルケアも完璧、座り姿やふとした指先の所作などはそのとき車内にいたどの女性よりも美しいものでした。

向かいに座るジーパンにリュック姿、口紅も取れかけたような私など、ただ性別が女というだけ。
女性としてその足元にも及びません…お恥ずかしいかぎり…。


あの美しさはシロウトさんとは思えない。
きっとどこかのゲイバーの名の知れたママさんに違いないと思いました。
60代だとしたらその世界の開拓者だったのではないでしょうか。
私はその世界に疎くて存じ上げないけれど、きっと凄い方。

と同時に、私は少し悲しい気持ちになってしまったのです。

なぜなら一緒におられた男性が周りの目を気にしている様子で、邪険にすることはないけれど終始よそよそしい態度を取っておられるように感じてしまったから。


もしその女装家の方の服装が異様に派手だったり、歳不相応で見苦しいものなら、男性の気持ちもわからないでもないです。

もしその女装家の方の態度が下品だったり、公共マナーが悪かったら男性の態度もわかります。


ですがその女装家の姿はとても美しくて、とても凛としておられ上品だった。

公共の場にそぐわないような行為もしておられませんでした。

私が話し声ではじめて気が付いたくらいに。



ここまで完璧な女装ができる方ですから、おそらく賢くて仕事もできる方ではないかと思います。
性別を超えて美しいレベルまで容姿を整えることは並の人にはできないはず。

話の内容までは聞こえてきませんが、話している様子は落ち着いて理知的、政治経済などのお話をされている雰囲気でした。


もし二人が同窓会の帰りだとしたら、女装家の方は何日も前から凄い覚悟でもって、お化粧をして参加する決意をされたのだと思います。



その男性が昔の知人友人なら、その勇気を讃えて親しく普通に会話して欲しかった…。


女装家の方はもっと友人として尊重され大切にされるべき方に違いないのに…。




とは言っても昔は LGBTQ が病気だと思われていた時代もあります。
その世代の男性にそれを強要するのは難しい話なのかもしれません。
早々に別行動せず一緒に電車に乗って会話しているだけで賞賛すべき事なのかもしれません。


先に男性が停車駅で降り、女装家の方が車内に残られました。

私が降りるのは次の駅。

余程、女装家の方にその美しさに驚いたこと、とても素敵だということをお伝えしたかった。

でも急に話しかけたら驚かれるかもしれない。
むしろ馴染めるようなお姿で外出されたのに電車内で声をかけてしまったら、女装家の方が肩を落とされるかもしれない。
周りがざわついてご迷惑になるかもしれない。


色々思ってしまったら結局声をかけられずじまいでした。


駅に着いて電車から降りる子供と私。
女装家の方が降りるのはもっと先の駅のよう。


「とても綺麗な女装家の方だったね」
と親子で話しながら帰りました。
小学生にもわかるその美しさ、
やっぱり只者じゃない。


こんなところで書いても仕方ないのかもしれないけれど、あの時伝えられなかった気持ちが巡り巡って、そのうちその女装家の方に届いたら良いなという思いを込めて書きました。

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