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離職して9年。医療職をやめて良かったこと

医療従事者を辞めて9年が経ちました。

先日、たまたま医療職を辞めた時に書いた日記が出てきたのでXにツリー投稿してみたら、思いがけず色々な方から共感していただきました。(ありがとうございます)

中には、医療従事者のお仕事が大好きで、天職だ!という方もいらっしゃるでしょう。
でも、そんな方だけではなく、今の仕事内容や環境に疑問を持っていたり、いち早く辞めてやる!!とすら思っておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私もそうでしたし、そうだったからこそ辞めました。

なんとしてでも医療従事者の資格を使わずに生計を立てたい、資格の肩書きで呼ばれる人生を辞めたい!と思っていたので、けっこう無謀な転職をしました。
全く義理もない初対面の人に「資格があるのに勿体ない!」と説教を食らったり、途中、転職がうまくいかず、生活費が赤字の下積み生活で借金したこともあります。
私は不器用で世間知らずゆえ、泥臭くここまでなんとか漕ぎ着けた形ではありますので、正攻法のほうなものを知っているわけではありませんが、それでも、今は転職して良かったことの方が総じて多いです。

本記事では、医療職を離職して、具体的にどのような面でよかったと感じているかをご紹介してみます。


①仕事の時間・場所に融通がきくようになった

人の体を取り扱うという医療のお仕事柄、常にそこにいなければなりません。
仮に患者さんがいない時間でも、待機していなければいけないので、なかなか自分の好きに時間をコントロールすることが難しいです。

さらに、当たり前ですが上司も皆医療従事者なので、体調不良ひとつで休むにも「熱何度?」「病院行った?お医者さんはなんて?薬貰った?」と聞かれる。
つまり、いちいち事細かに具体的数字や処方を報告しなければいけないので、ちょっとやそっと体調が優れないくらいでは休めなかったりします…

これは医療職に限らずですが、
1日中仕事で家を空けていると、一人暮らしだと、宅配便の荷物を受け取ることすら一苦労しますよね。

医療業界は朝が早い

夜勤専従のお仕事を除いては、一般的な病院・クリニック勤務の医療職が一番忙しい時間帯は、朝一や午前中であることがほとんどです。

世の中の企業の多くは、9時または10時出社の会社が多いと思いますが、病院やクリニックは、8時前後から開いているところが多いです。
さらに、開院時間が8時でも、朝のカンファがあったり、機械の立ち上げがあったり、白衣に着替えたりする時間があったりするので、
実際はさらにその30分前には出勤していることが普通だったりします。
(逆に、同じく人の体を扱うといっても、働くサラリーマンがメインの顧客の整体院などは、夜が一番忙しいところもあるかもしれません)

朝起きるのが苦手な方にとっては、出勤時間が朝早くて、しかも、朝一がピークというのは、ちょっと大変かもしれません。
しかも、これは余談ですが、朝は順番待ちで混んでいるうえ、患者さんも朝から絶食して朝早くから採血しに来てくれたりしているので、低血糖でイラついている人も多く、待合の雰囲気も殺気だってピリピリしています。苦笑

これは転職後の業種にもよりますが、
営業であれば直行直帰ができたり、IT業界では、フレックスタイムや時差出勤、リモートワークという働き方も珍しくなくなりました。
もちろん、すべての職場がそうとは限りませんが、そういった職場を選ぶ選択肢が広がり、自分がどの働き方であれば許容できるか、心身に負担をかけずパフォーマンスを最大化できるか、柔軟性を持たせることがしやすくなります。

例えば、私は今は在宅勤務をしていますが、実は、職場の人とランチをするのがとても苦痛でした。
給料の出ないお昼休憩の1時間を使ってまで、気を遣って当たり障りのない雑談をしなければいけないし、その雑談も休憩室にいる同僚や先輩が密かに聞いていたりするし、外食するなら、食べるメニューまで顔色を伺って気を遣わなければならない時もあります。
ですので、通勤の手間暇がなくなるのはもちろん、好きなタイミングで好きなものを一人で食べられる今の環境は、とてもありがたいなと感じています。

②服装や髪型など好きな格好ができる

医療職をしていると、当然ですが白衣を来て仕事をします。
着替えが必要なので、見た目のおしゃれさよりも着替えやすさやロッカーに収納しやすいアイテム(なくしやすいピアスはつけない、重ね着はあまりしない、など)重視になってきます。

髪色やメイクも、清潔感はもちろん、幅広い年代の方が来院される病院では(診療科や施設の客層にもよりますが)、無難で派手でない格好が求められます。(化粧をしていない女性スタッフの方も結構いました)
ヘアカラーの明るさやヘアゴムの色まで規定が厳しく定められている施設もあるでしょう。
私が在籍していた職場は比較的自由だったので強制されたわけではありませんが、病気でオシャレができない人への配慮として、派手な格好はしないと個人的に決めており、無機質な格好をしていました。(物理的に近い距離で接触することも多いので、セクハラなどを未然に防ぐためでもありました)
通勤時も待合を通るため、あまり目をつけられたくなくて、GUやユニクロばかり着ていました。

節約にはなったものの、華の20代前半を仕事のためとはいえ、そんな風に色気を殺して過ごしてきたことを、あれでよかったのかなぁと今でも少し後悔しています。
その反動か、医療職を辞めてからは服飾品を爆買いして、毎日好きな服をたくさん着ています。

逆に、必ずしもオシャレをしなくても、人目を気にしないラクな格好や、メイクが面倒な方はノーメイクで仕事をすることもできます。
(もちろん、職場によってTPOはあると思いますが)

③収入が上がりやすい

一部の自由診療クリニックなどを除いては、医療職は基本的に、「誰がやっても同じ水準のアウトプット」が求められます。
業務を正確にこなすのは当たり前ですが、周りの人に差をつけて抜きん出る、ということがしにくい。
むしろ、個性を出したり機転をきかせて自己流にアレンジしたり、人並み外れたことをしたり、輪を乱してまで自分だけ躍進しようとすると怒られます。

医療従事者は資格手当や夜勤がある分、普通のサラリーマンより高待遇と思われがちですが、実はベースの収入はそこそこ良くても、あまり上がり幅が期待できません。
実務で他の人と差をつけにくい分、収入も勤続年数に応じてお気持ち程度上がるくらいのことが多く、インセンティブもつきにくいためです。

言い換えると、安定してはいるので、家族を養っている方にとっては人生計画が立てやすいのかもしれませんが、20代の頃こそ同級生よりも少し余裕のある生活ができたとしても、その水準を維持するのみで、役職に就かない限りは、やがて他職種の同年代に追い越されてゆくことになりがちなのが実情です。

また、医療職は「手に職」と言われる割には、転職する際もなかなか業績が可視化されにくく、積み上げたスキルを外の人に説明する材料が、どうしても勤続年数や症例数といった、自分の努力や工夫とは無関係な外的要素になりやすいです。
業務の傍らで研究発表などしていれば別かもしれませんが、そもそも臨床勤務要員として重視される人材というのは、現場でどの程度即戦力として役に立つかというのが第一で、研究成果を求めている施設ばかりとも限りません。

これは、多少無理すれば後々実績として蓄積されたり、実力で評価されやすい業界に転職して良かった大きな点です。
私のいるIT業界は特に、他業種から転職してきた方や年齢層も様々なため、年功序列的な評価もあまりありません。

④やりがいや経済成長に寄与している実感が感じられやすい

私は検査技師という仕事をしており、数字が見える仕事だったため、そういう意味では医療職の中では自分の仕事が可視化されやすかったと思います。
定期的に来院される患者さんの検査をしていると、前回より良い値が出るとこちらまで嬉しくなったものです。

ただ、結局診断をするのは医師で、病気を見つけて報告したとしても、あくまで医師の先生の手柄で、コメディカルは黒子です。
患者さんを普段通りのリラックスした状態にさせたり、正確でベストな結果を出すための環境を整えることこそが実は腕の見せどころだったりはしますが、判読結果も、専門知識のある人間による目視が必要とはいえ、今やほとんど機械判定で自動で出てきます。

もちろん、患者さんの健康が守られることが一番喜ばしいことではありますが、自分が病気を見つけて報告し、無事に治療を終えられた患者さんがまたいらした時に「いやぁ、〇〇先生が病気見つけてくれたおかげで命拾いしたよ!」とおっしゃられていたのは、嬉しい反面、ちょっとだけ切なくなりました。

職業に貴賎はないとはいいますが、転職した今は、お客様と直接やりとりしながら提案やアドバイスを差し上げたり、直接折衝しない案件の場合も、クライアントのビジネスモデルから関わったり、経済成長に微力ながら関われている実感を持てている実感がより感じられるようになりました。
仕事をしながら、メインの業務以外の周辺知識も肉付けされていくので、一石二鳥でもあります。

また、これも業種によりますが、作ってはプロジェクトの完成や公開を迎えて、の繰り返しなので、前述したように成果として形のあるものが残りますし、定型的な業務よりも達成感も感じられやすいです。

⑤理不尽なクレームや要求を直接受けなくてよくなった

自由診療クリニックや産科など来院者層に偏りがある施設を除いては、医療は基本的にあらゆる年齢層、階級(表現が適切ではないと思いますが、他に言葉が思いつきませんでした…)の人が来ます。そして、こちらからは患者を選べません。
優しい患者さんもおられる中で、詳しくは触れませんが、中には、まるで高級ホテルやサロンの召使いのように、医療従事者をアゴで使ってくる人も実は結構います。

経験が浅い時は、どうにかしてすべての人たちにも喜んでもらおう!と四苦八苦したり、自分の接し方が未熟だからこんな言われ方をするのだと反省して、実際に高級ホテルに接客を学びにバイトにまで行ったほどです。
しかし、結論から言うと、おかしな人やモラルに欠ける人は一定数いますし、そういう人に対してこちらがどうふるまおうと、(それがその人にとって普通のことなので)態度を改めることはありません。
今思うと、若かったからこそ見下されていたというのもあるでしょう(これも、前述した地味な格好をしていた理由の一つです)。

今の業務でも無茶な要望を受けたり、口調がキツいなと感じてへこむことはありますが、それでも、自分に落ち度のないクレームやワガママを言われる度合いはかなり少なくなりました。
不特定多数の人と関わるということがなくなり、また、仕事を発注してこられるのは基本的に社会人の方ですから、急にキレられるようなおかしな人に一定確率で当たる恐怖がなくなりました。

一方で、理不尽に言われることがなくなったというのは、言い換えると、何か言われた時というのは私に何かしらの落ち度があるということなので、言われた時にグサリと落ち込む度合いは大きくなりましたが。笑

仕事を断れるようになった

また、病院では来院した患者を一医療スタッフが断ることはできませんし、もしその権利があったとしても、来院患者を断れば、下手すると裁判に発展しかねませんが、独立してからは「取引をしない」「受注を断る」という選択ができるようになりました。
会社員の場合も、もし仮に、自分の会社が取引先や客層があまりにもストレスを感じる場合は、その会社を辞めて同業他社に転職することも可能です。

一律価格の病院のように、どの病院も似たような人が来るのと違って、
会社ごとに特色や顧客層が明確に異なるため、同じような業種だとしても、職場を変えるだけで会社の方針や特色、営業の仕事の取り方などが異なるため、取引先も客層もガラリと変わったりします。

まとめ:リスクを取ってでもキャリアチェンジして良かった

転職後の業種によるところは大きいと思いますが、
総じて働く環境を自由に選べるようになったことはかなり良かったなと思っています。

下積みをしていた時期を考えると、その時期の埋め合わせのためにももっと成長しなければいけないなと感じていますが、この先も長く働き続けることを見据えると、リスクを取ってでも少しでも右肩上がりで成長が見込めそうな選択をしたことには後悔していません。

もちろん、今も医療現場で働く方のことを悪く言ったり、全ての方に転職をおすすめしたいわけではありません。また、絶対にこういう未来があるよ!と、転職の成功を保証するものでもありません。
しかし、今の職場環境に不満や疑問を感じておられる方がいましたら、何か参考にしていただける部分があれば幸いですし、逆に、これを読んで今の医療現場のありがたみを再認識した、という場合ももしかするとあるかもしれませんよね。

仕事は人生の時間やアイデンティティの大部分を占めますし、時間は戻ってきません。
どんな道を選ぶことが最適か、未来の自分や大切な人のためになるか、働き方を考えてみて⁩はいかがでしょうか。

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